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校正未経験者に必要な基本知識[研修やセミナーでは教えてくれないこと]
どんなことでもそうですが、はじめたばかりの頃は気づかないことがあります。慣れとともに視野が広がり、徐々にわかってくるようなことです。
校正・校閲にもそういうことはたくさんあります。実務では当然ですが、実務以外のところでも色々と大切なことがわかってきます。
校正のやり方や校正記号の使い方などは、書籍やネットなどで調べれば知ることができます。ただ実務以外での大切なことは、なかなか知る機会がありません。
経験とともに覚えていくようなものは、教える側も当たり前のことだと思っているので、ついつい忘れがちになってしまいます。
そのような知っておくべきだけど教えてもらえないことを少しまとめてみました。
1. はじめて経験する校正・校閲
最初にメインで携わる校正の媒体は大切です。
自分が最初にした校正は、不動産関係の書類に書かれた手書きの文章が正しく入力されているかの照合と、その文章の校閲でした。文章のフォーマットはある程度決まっていたので難易度は高くありませんでしたが、今思えば、それが初心者には最適だったと思います。
決められたルールの枠内で反復して経験を積んでいくことで、校正の基礎を身に付けることができたと思っています。
単純だと思える校正でも、
- 赤字の入れ方
- 疑問の出し方
- 校正するスピード
- 読みにくい文字
- よくある間違い
- 見落としてしまったもの
などなど、学べることはたくさんあります。
あくまで個人の経験則からですが、最初は色々な媒体の校正に手を出すよりも、媒体を限定してその中で校正のスキルを高めていくほうがよいと思います。
2. 校正に必要な文房具
1. 修正液・修正テープ
普段は、便利な修正液や修正テープも、校正時には使わないことが多いです。削れたりはがれたりする恐れがあるからです。絶対に使わないわけではないですが、安易に使用するのは避けます。
2. フリクションボールペン
最近の文具でいえば、フリクションは使いません。摩擦熱で消えてしまうからです。書き間違えてもすぐに消せるのが利点ですが、校正時にはその便利さが仇となります。これは絶対に使用しません。
3. 定規
サイズ指定されている物件では、校正者がサイズを測ることもあります。また誌面内の各要素が均等に配置されているかなどを確認する場合も、目視でなくちゃんと定規で測ります。
ハガキなどの郵便物は、フォーマットが決められています。二つ折り三つ折りのリーフレットなどになれば、1mm単位で調整されていることもあります。そのため定規は必須のアイテムです。0.5mm刻みのものがあれば重宝します。
4. スマホ
何か調べものに使うのではなく、QRコードの読み取りに使います。スマホの普及とともに現在では、QRコードはどの媒体にでも見られます。
QRコードは、小さすぎたり周りに余白がなかったりすると読み込めないことがあります。また他のQRコードが近くにあれば、干渉して読み込みづらくなります。複数のQRコードがあると、入れ間違いもあります。QRコードの読み込み確認は、必須の作業です。
5. 辞書
今ではオンライン上の辞書もあるので、調べものはPCがメインです。紙の辞書で調べるよりも、PCで調べたほうが圧倒的に利便性はいいです。ただ紙の辞書も稀に使います。稀にしか使いませんが、複数の辞書を持っています。これは、辞書によって許容範囲が違うので、一つの辞書に頼り切るのはよくないからです。
3. 校正チェックの仕方
原稿の赤字を校正した印として、何らかのチェックを原稿やゲラに付けることがあります。
これも「一切チェックをつけない」という会社もあれば、「鉛筆でレ点を入れる程度」「蛍光ペンやダーマトでチェックを入れて消し込む」と様々です。
校正も品質管理である以上、チェック漏れがないように確認した箇所には何らかの印を付けるのが普通です。余程の事情がない限りは、何もチェックをつけないということはありません。
校正済みのゲラには赤ペンと鉛筆だけの書き込みしかないと思われがちですが、校正が終わった後のゲラを見ると意外とカラフルになっていることがあります。
チェックの仕方は、会社によって様々です。ルール決めされている会社がほとんどなので、ハウスルールに合わせて柔軟に対応していくことが大切です。
4. 赤字や疑問を書いてはいけない場所
• ページ数の多いものは、校正ゲラの左上や右上には、なるべく赤字や疑問を書きません。これは、ページ数が多いとゲラをまとめるとき、左上や右上をダブルクリップで留めるからです。
クリップで留めると、その部分が見えにくくなるばかりか、場合によっては死角になって隠れてしまうので、書き込んだ赤字や疑問が見逃されることがあります。
• 校正ゲラをスキャンしてPDFでやり取りすることは多いです。また保管の際に紙ではかさばるのでPDFにして保管することもあります。
スキャンでは、ゲラの縁から内側数ミリは読み取れません(設定によりますが)。そのため文字が切れないように、ゲラの縁ギリギリには文字を書きません。
5. 媒体によって校正項目も違う
雑誌やカタログなどページ数の多いものは、目次や参照ノンブル、柱、脚注など、チェック項目は多岐にわたります。それぞれを分業して確認することもあります。それら校正項目や確認手順は、会社によって微妙に違ってきます。
また目次や柱などは一括で確認したほうが効率がよいため、校正を始める前に、最初に確認するのか後で確認するのかルール決めします。
校正する前の作業項目の設定や確認手順は、重要になってきます。自分独自のやり方で校正していくということは少ないです。
6. 校正回数
校正回数も様々です。常に校正者が関わっているというわけでもありません。これには、予算や納期が大きく関係しています。
校正が入るのは初校や再校ぐらいで、後工程は、オペレーターがセルフチェックしたり、第三者校正をして終わらせたりすることもあります。
本来なら、
「初校 ⇒ 校正 ⇒ 再校 ⇒ 校正 …」と順次校正をしていくのがベストですが、
「初校 + 再校 ⇒ 校正 」というフローもあります。
初校と再校の2工程分を一回の校正で終わらせます。このケースは結構多いです。
7. デジタル化の波
アナログだと思われる校正も、デジタル化が進んでいるところは進んでいます。すべての校正物を、デジタルで進めるのは現状では不可能に近いですが、物件単位でいえば、がっつりデジタル化できているものもあります。
業界によれば、いまだに紙が主流というところも存在しますが、昔と違いDTP系のソフトを普通に使える人も増えてきたため、デジタル化の導入も比較的スムーズになっています。
紙が主流だと思われる校正者といえども、PCスキルが求められてきます。
8. チーム作業
校正・校閲は、個人で黙々と作業するイメージを持っている方も多いと思いますが、意外とチームで動いていることが多いです。
複数人で作業を分ける場合は、赤字や疑問の出し方を話し合ったり、同じような赤字や疑問が複数入る場合は、一括で指示を出したほうが早いので、作業者間で相談・共有したりすることも頻繁にあります。
コミュニケーションが活発とまではいきませんが、一人で黙々とやり続けられるほどコミュニケーションが不要な仕事ではありません。
これからの校正・校閲
ここ10年、20年で見れば、印刷物は右肩下がりの傾向にあります。だからといって、校正の需要が減ったかというとそうともいえません。紙媒体が減ってもWebの校正が増えたおかげで、校正の仕事自体はむしろ増えているくらいです。
ただその校正を専門の校正者がやっているかどうかは別です。予算圧縮のため、編集者が校正をしていたりライターが校閲をしていたりすることは多いです。
またWeb媒体との比較で、紙媒体の校正も短納期化が求められてきています。「働き方改革」が打ち出されてきてからは、その流れが加速しているように思います。
今まで通りのやり方をずっと続けていくと、どこかで限界が来るのは間違いないです。デジタル化の波も徐々に浸透してきています。どこかで校正のやり方を大きく変えていく必要があるかもしれません。
校正・校閲は、色々な領域でニーズがあります。これから校正者を目指すという方は、紙・Web関係なくどのフィールドでも活躍できるようなスキルの獲得が望ましいです。