校正・校閲の表記ゆれ(表記のゆらぎ)はPDFで解決[やり方解説]
今やPDFはビジネスでは欠かせないものです。今回は、このPDFを使って文章中の表記ゆれを検索していきたいと思います。
▼ 表記ゆれとは?
・ください ⇔ 下さい(ひらがなと漢字のバラつき)
・コンピュータ ⇔ コンピューター(音引きの有無のバラつき)
・取り組み ⇔ 取組み(送り仮名の有無のバラつき)
このような文字の表記の違い(バラつき)を「表記ゆれ」といいます。
漢字で書くと「表記揺れ」となります。
上にあげている表記ゆれの例は、どの表記が正しいというわけではありません。これは会社や媒体によって、どの表記にするかを決めています。いわゆる表記ルールです。
表記ルールを定めることで、文章に統一感を持たせることができます。また、どちらの語にすべきか迷ったときの判断基準になります。
文章内に表記ゆれが多いと、読みづらいだけでなく、それが気になり文章の内容が伝わりづらくなります。文章は、伝えたい情報を相手にスムーズにわかりやすく伝えるものです。伝達を阻害するものは、少しでも取り除いておいておくのが賢明です。
たとえば、
次の文のように「取り組み」の語が3パターンに表記ゆれしているとします。
『環境問題への取り組み、地域社会貢献への取組み、働き方改革への取組をわが社は~~』
文章内の近い場所で、表記ゆれを起こしているとかなりの違和感を覚えます。
単に誤って表記ゆれをしているならまだしも、
・意図的にそうしているのか?
・そこに何らかの意味があるのか?
と深読みする人も出てくるかもしれません。
校正者は、このような表記ゆれを見つけるために、まず表記ルールにある単語を一つずつ頭の中に叩き込みます。何十もの単語を頭の片隅に置きながら文章を読み、正しい表記になっているか確認していきます。
ですが、この表記の不揃いは、PDFさえあれば無料で簡単に一瞬で探し出すことが可能です。しかも、誰でもできます。校正経験がなくても大丈夫です。
未だに表記ゆれのチェックを人の目だけに頼っているようであれば、時間とコストのムダでしかありません。
この記事では基本的な手順を説明していますが、応用すればもっと便利な使い方もできます。興味のある方は以下の記事もご覧ください。
1:表記ゆれ検索のやり方 <準備>
■ 総務省統計局のHPで公開かれているPDFを使用します。
『労働力調査(基本集計) 2019年(令和元年)7月分 (2019年8月30日公表)』
この文書に次のような表記ルールがあるとします。
No. | 使用可 | 使用不可 |
1 | ケ月 | か月 |
2 | および | 及び |
3 | すべて | 全て |
4 | または | 又は |
5 | 勤務先 | 勤め先 |
この使用不可の文言を、PDFの文章内から探し出していきます。
(※実際の表記ルールは、数も多く使用例なども明記されています)
2:表記ゆれ検索のやり方 <手順>
1. ダウンロードしたPDFをAcrobat Readerで開きます。
※Acrobat Readerは無料でダウンロードできます。
2. メニューバーの【編集】から【高度な検索】を選択します。
3.【詳細オプションを表示】を選択します。
4. 検索の詳細オプション画面が表示されます。
・【検索する語句を指定してください】の欄に使用不可の文言を入力します。
▼ 使用不可の文言
----------------------------------
か月 及び 全て 又は 勤め先
----------------------------------
※単語の間には、半角スペースを入れます。
・【次の条件を含む】の欄は【いずれかの語が一致するものを検索】を選択。
・【その他の条件】の欄は、すべてチェック不要です。
あとは右下の【検索】ボタンを押すだけです。
これで、PDF内にある使用不可の文言をすべて検索することができます。
3:表記ゆれ検索のやり方 <検索結果>
■ 検索前の画面
■ 検索後の画面
画面の左上には、検索結果が表示されています。
『1個の文書で36件見つかりました』と表示され、その下に「検索結果」が出ます。
・PDFの文書内では、使用不可の「か月」が黄色でハイライトされています。
■「及び」
■「全て」
■「又は」
■「勤め先」
以上です。
手順通りやれば、誰でも簡単にできます。
是非一度お試しください。
おわりに
PDFで表記ゆれを見つけたあとは、原稿や校正ゲラに転記するか、元のデータ(PDFにする前のWordなど)を修正するかのどちらかになります。どうしても、そこは人の手というアナログな作業になります。
ただ、その作業を考慮しても、精度・時間ともにPDFで表記ゆれ検索をしたほうが圧倒的に効率化できます。