トル(トルツメ)・トルアキ(トルママ)の意味解説/よくある間違い紹介

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トル(トルツメ)・トルアキ(トルママ)の意味/よくある間違い

「トル」は校正記号の中でも、TOP5にあげられるぐらいよく使用するものです。

「トル」と似たものに、
・トルツメ
・トルアキ
・トルママ
 などがあります。

校正の勉強を始めたばかりの方は混乱するかもしれませんが、
・トル    =  トルツメ
・トルアキ  =  トルママ
 になります。

なので、実質2つしかありません。

1. トル」と「トルツメ」は、取って詰めるという指示です。

校正記号のトルとトルツメ

2.トルアキ」と「トルママ」は、取ってそのままにしておくという指示です。

校正記号のトルアキとトルママ

校正記号表の本則は「トル」と「トルアキ」になります。
トルツメ」と「トルママ」は許容とされています。

あくまでJISの印刷校正記号の基準ですので、どの校正指示を使うかは自由です。ただ、複数の校正者で作業している場合は必ず校正記号を統一するようにしましょう。

今回は、この単純な「トル」から起こる間違いを紹介したいと思います。

トルから起こる色々な間違い

1. 取ったあとの前後の文が繋がらない

校正記号のトルツメの紹介イラスト

修正後↓

校正記号のトルツメの紹介イラスト

これは非常によくある間違いです。
取ったあとの仕上がりをイメージできていない典型的な例です。

トルもそうですが文字を挿入するときも同様で、前後の文はもちろん、取ったあとの文全体の流れも注意する必要があります。

2. トル範囲があいまい

校正記号のトルツメの紹介イラスト

「谷や」の後ろの「、(読点)」の一部に赤字がかかっています。

赤字を入れる側からすれば、読点はそれほど気にならないかもしれません。ですが、校正側からすれば判断に迷うところです。修正範囲を間違うと大きなミスに繋がることもあるため注意が必要です。

3. トルことによって全体のバランスが崩れる

校正記号のトルツメの紹介イラスト

修正後↓

校正記号のトルツメの紹介イラスト

ここは編集者やデザイナーの職域かもしれませんが、段組の行数が左右で違うと誌面全体のバランスが悪くなります。また、余計な空白スペースがあると、その部分が浮いて見えて違和感があります。

取った分だけ新しく文を足すのか、左の段から数行送り込んで調整するかは、校正者では判断できません。ですが、「何かおかしい」ということに対しては、校正者としてアラートを出すのは自然なことです。

4. やってはいけない「トル」の赤字の入れ方

メトシトリンカプセル」を
トルシトリンカプセル」に修正したい場合。
 ※トルシトリンカプセルは、骨粗鬆症・骨軟化症の改善に効果のあるお薬

校正記号のトルツメの紹介イラスト

修正後↓

校正記号のトルツメの紹介イラスト

「メト」の文字を「トル」の文字に修正する意図で赤字を入れたが、削除の「トル」と受け取られてしまった例です。

これは「トル」でよく紹介される適切でない赤字の入れ方です。この場合は、赤字の入れ方を少し工夫する必要があります。

例えば、
"「メト」を「トル」に正ス "  のように文で修正指示を入れたり、
"トル(トルシトリンカプセルにする)"  として、「トル」の赤字を入れて鉛筆で修正結果を補足したりして対処します。

※トルだけでなく他の赤字でもこのような例はありますが、普段から第三者に伝わりやすい赤入れを心掛けておけば、この手の誤解はほとんど防ぐことができます。

5. 二重線のトルは見落としやすい

トルやトルツメ以外にも削除指示として、二重の打ち消し線を使用しているのを見かけることがあります。赤字を入れる側は簡単なので便利ですが、赤字を見る側にとってはわかりづらいのでやめたほうがよいです。

次のように、文中の一部に打ち消し線が入っている場合です。

校正記号のトルツメの紹介イラスト

打ち消し線以外にも複数の赤字が入っていると、赤字の中に埋もれてしまい見落としやすくなります。

この場合は、次のように二重の打ち消し線だけでなく「トル」の赤字も加えるのが適切です。そうすれば、赤字を見る側にも伝わりやすくなります。

校正記号のトルツメの紹介イラスト

※文章中の校正記号は『JIS Z 8208:2007(印刷校正記号)』を参考にしています。
※校正記号の例文は、青空文庫:谷崎潤一郎の『細雪』の一文を使用いたしました。