目 次
校正・校閲で数字の見間違いは致命的なミス[具体的な対策方法]
数字の組み合わせで、意味を成す重要なものといえば、
- 金額
- 電話番号
- 品番/商品スペック
などが思い浮かぶと思います。
どれも重要項目で、一字でも間違えてしまうと大きなクレームに繋がる恐れがあります。
仮に商品スペックのサイズ「100㎝」ものが「10㎝」に間違っていたら大変な違いです。商品を購入する際、サイズは重要視される項目の一つです。たった一つの数値の間違いが商品の売り上げに大きく影響することもあります。
しかも、
数字にはパッと見ただけではわかりづらいものがいくつかあります。
たとえば、
「3と8」
「0と6や9」
「1と7」
「5と6」
などはよく見間違えられます。
クセのある字や乱雑に書かれた字などでは、
「8」の下側のまるの部分がつぶれて「9」に見間違えることがあります。
また、数字と他の文字を見間違えることもあります。
たとえば、
「0と O(オー)」
「1とl(エル)」
「2とZ(ゼット)」
などです。
特に品番などは、数字とアルファベットの組み合わせが多いので注意が必要です。
手書きの「2」と「Z」は、ほぼ区別がつかないこともあります。
さらにフォントの種類によっても見分けがつきづらいものもあります。凝ったデザインのフォントになると非常に判読しづらいものです。
数字の見間違いは、そのパターンを考えると無数にあるともいえます。
次のように、フォント次第では、
「Z(ゼット)」が数字の「2」のように見えることがあります。
数字の間違いは大きなクレームに発展する
▼ 電話番号の間違い
電話番号の間違いは、長年校正されている方なら話として聞いたことがあると思います。
電話番号が間違っていた場合……
たとえば、
美容院やレストランが広告を出して、その電話番号が間違っていたら電話での予約が取れません。機会損失になってしまいます。すぐに間違いがわかればいいですが、気づかないままだと損失は増えるばかりです。
また間違った電話番号が繋がらなければ不幸中の幸いですが、繋がってしまった場合には被害は大きくなるばかりです。そこが個人商店なら間違い電話の対応に追わるため営業を妨げることになります。
謝罪だけで済めばまだ被害は小さいほうです。
被害が大きなものになれば、間違った相手先の電話番号の買い取りなどに発展する恐れもあります。またイベントなどの一度しかないものなら取り返しがつかなく損害額は計り知れません。
電話番号の間違いは、最悪の場合を想定すれば被害は拡大していく一方です。
市町村合併などにより、市外局番が変わる場合もあるので注意しましょう。
▼ 商品価格の間違い
金額の間違いも大きなクレームに繋がります。
身近な例で行くと家電量販店の広告。
新聞の折り込み広告などで手にしたことがあると思います。
たとえば、
「100,000」の液晶テレビの価格が「0」が一つ多く「1,000,000」になっていた場合、あまりにも高すぎるのでお客さんは買いません。
この場合、客側が店に「高すぎない?」「これ間違いじゃないの?」と教えてくれることもあります。店側としては、売りたかった商品が売れないため当然損失になります。クレームが発生します。店と広告制作側の問題です。
ただ、「100,000」の液晶テレビの価格が「0」が一つ少なく「10,000」になっていると話は違ってきます。
この場合、不思議ですが広告を見た人は「安すぎる」「間違っている」なんて微塵も思いません。広告を持って急いで店に向かいます。そこで間違いが発覚します。客側は、その商品目当てに来たのに買えないので当然怒ります。店側はただ謝るしかありません。
金額を間違ってしまうと、店側と客側双方に多大な迷惑をかけることになります。
金額にもよりますが、「880円」のものが「830円」になっていた場合。
これぐらいの誤差なら、店側の裁量でそのまま値引いた額で売るかもしれません。
もしくは、間違いを詫びて粗品などを付けて対応することも考えられます。
数字の見間違い対策
数字の見間違いや書き間違いは、誰にでも起こるヒューマンエラーの一つです。完全に防ぐことは不可能ですが、校正者としてはミスをゼロに近づけていく努力をしなくてはいけません。
見間違いに対してテクニック的な対策も大切ですが、それ以上に取り組む姿勢が重要になってきます。
1. フォントを変える
▼ 対策1:原稿のフォントを明朝体にする
明朝体とゴシック体を比べた場合、明朝体のほうが数字個々の差が大きいので、違いに気づきやすくなります。原稿とゲラを照合する際には、原稿のフォントを明朝体にすることで見間違いを減らすことができます。
特に数字とアルファベットが混在して使用される場合などには効果が大きいです。
■ 明朝体とゴシック体の比較
MS明朝
MSゴシック
明朝体は、一般的に横の線が細く縦の線が太い書体で、「とめ」や「はらい」「うろこ」とよばれる三角のものがあるのが特徴です。一方、ゴシック体は、線の太さが縦も横も均一なのが特徴です。この特徴の差により、数字同士を区別しやくなります。
※見間違いの対策として、フォントを明朝体にするのは、数字以外の文字や記号にも効果的です。
2. 見方と読み方を変える
▼ 対策2:見方と読み方を変える
数字の確認は、一字ずつ区切って見ていくのが効果的です。これは、校正のチェック方法の一つである読み合わせ校正でも実践されています。
数字の組み合わせを一つの単語として捉えていると、
「00000」のように同じ数字が続く場合に1桁見間違えたり、「1と7、3と8」などの似た数字を混同したりする可能性が非常に高くなります。
数字の見方や読み方を変えることで、間違いにも気づきやすくなります。
たとえば、「1,000円」という語を確認する場合。
「せんえん」と一つの単語のように読んでいては、見間違える可能性が大きいです。数字の組み合わせは、一つ一つの数字にわけて確認していきます。
「1,000円」の場合なら、
「いち、かんま、ぜろ、ぜろ、ぜろ、えん」というように一文字ずつ確認していきます。
文字を分解して見ることで、一つの文字に対して意識が高まるので見間違いのリスクを減らすことができます。
■ 同じ数字が続くときの見方
「00000888」のように同じ数字が続くとき、数字が一つ抜けていたり一つ多く入っていたりしても間違いに気づかないケースがあります。これは、大抵、数字を一つの固まりと捉えていることから起こるものです。
「00000888」を確認する場合。
読み方としては、「ぜろ、ぜろ、ぜろ、ぜろ、ぜろ、はち、はち、はち」ではなく、
「ぜろが5つ、はちが3つ」というように読みます。
このときに一つ一つ数字をちゃんと数えるのも忘れないようにしましょう。パッと見て「5個と3個だ」と判断していては間違いにも気づけません。
数字の組み合わせは一つの固まりとして捉えず、一つ一つの数字を分解して確認するようにします。面倒ですが、この方法が一番効果的です。
3. 目線を変える
▼ 対策3:目線を変える
目線を変えるとは、通常の目線と違った目線で確認するということです。
規則性がある連続した数字などの場合、うっかり読み間違えてしまわないようにする効果が期待できます。
次のように西暦が並んでいるとき、横目線で見るのが普通です。
この場合、「2018年、2019年、2020年、2021年、2022年」という横目線で見るだけでなく、
縦目線も利用します。
■ 縦目線での確認方法
1.共通する数字が同じになっているか。
2.変化する数字だけを見て、規則正しく変化しているか。
横目線と縦目線のどちらか一方だけで確認するのではなく、
両方で確認することが大切です。
■ 縦目線での確認:カレンダーの例
規則性のある数字が掲載されているものとして、身近なものにカレンダーがあります。
カレンダーも、次のように横目線で確認していくことが普通です。
(※「22」がダブっています。)
カレンダーの数字(日にち)を横目線で追っていくと、
「1、2、3、4、5……」とプラス1ずつ規則正しく変化していくので、
そのまま読み進めていき、
「19、20、21、22、23、24……」とうっかり読み間違えてしまうことがあります。
数字が一つずつ増えていくという思い込みが原因となり、「22」を「23」と見間違えてしまいます。
これは誰にでも起こるヒューマンエラーです。このような間違いは必ずどこかで起こります。
そこで、目線を変えて確認していきます。
カレンダーは縦で見ると「+7日」になります。
■ 縦目線での確認
確認の仕方は、「7、14、21、28」という感じではなく、
「7、プラス7は、14」「14、プラス7は、21」「21、プラス7は、28」のようにします。ワンテンポ置くことで、読み流すことを防ぎます。
カレンダーや表組などは、横向きの目線と縦向きの目線を併用することで、見間違いのリスクをかなり減らすことができます。
4. 数字だけに絞る
▼ 対策4:数字だけに絞って確認する
文章中にある数字は、他の数字以外の文字や記号と混同する恐れがあります。また、文章の内容に引っ張られて読み流してしまうことも考えられます。
そのため校正後に見直すときには、数字のある箇所に絞って、ピンポイントで確認していきます。可能であれば、数字が出現する箇所にマーカーなどでチェックを付けておくと、見直す際もラクになります。
5. W(ダブル)チェック
▼ 対策5:作業者をかえてWチェックする
Wチェックは、見間違いの対策として広く用いられている手法です。作業者をかえて視点を変えることで、見間違いのリスクを減らすことができます。
ただWチェックは、2回目の作業者の取り組み姿勢が重要になってきます。単にWチェックをすればいいという心構えでは効果を期待できません。
おわりに
数字の見間違いは、前述した電話番号や金額以外にも、大きなクレームに発展しかねない項目がたくさんあります。
現在では、データを使用して校正することも多いです。人の目だけでなく、校正ソフトでチェックすることも可能になっています。たとえば、原稿のデータと校正ゲラのデータの数字部分を抜き出して、双方をExcelで照合するといったことも時間を掛けずにできます。
数字の見間違い対策は、制作環境に応じていくつも考えられますが、その中で自分の環境に合った納得のいくものを何個か組み合わせて実践していくことが大切です。