衍字(えんじ)の意味[脱字の対義語]
この記事では、衍字の意味についてイラストを用いてわかりやすく紹介しています。要点だけ知りたいという方は、最後の項目[まとめ]をご覧ください。
[記事作成にあたっては、以下の書籍・辞書・サイトを参考にしています]
・日本エディタースクール_新編 校正技術
・三省堂_新明解第八版
・漢字ペディア
衍字の意味
衍字とは、語句の中に誤って余計に入ってしまった不要な文字、重複して組んである文字のことをいいます。
一般的に浸透している用語とはいえませんが、編集者や校正者なら知っている割合は多いと思います。
この衍字の「衍」の漢字には「余り/余計な」という意味があるため、衍字は余計な文字ということになります。
[音読み]エン
[訓読み]あま(り)・おお(い)
[意味]
1. あまる/あふれる
2. おおい/おおきい/ひろい/ゆたか
衍字の対義語(反対語)は、脱字になります。
衍字 ⇔ 脱字
脱字はよく耳にする言葉です。あるべき文字が抜けていることを表します。
両者を簡単にいうなら、
衍字は文字が多い、脱字は文字の抜けということになります。
▼ 次のようなイメージです。
衍字の例文
▼ 衍字の例文
「ドラえもんの四次元ポケット」を正しい文とした場合、衍字の例は次のようになります。
A.ドラええもんの四次元ポケット
B.ドラえもんの四次元のポケット
C.ドラえもんの四次元ポケット四次元ポケット
A のように意図せず入ってしまったもの
B のように思い込みから誤って入れてしまったもの
C のようにコピペミスが原因と思われるもの
衍字となる要因は様々です。
※Cの例文は、正確には衍字でなく衍文とよびます。
以下は、『新編 校正技術(日本エディタースクール)』に記載されている衍字の例です。衍字の場合、文章として必ずしも間違いとはいえない場面もあるので、原稿との引き合わせをする際にうっかり読み流してしまうことがあります。
・幸いに間もなく病気も回復し
・幸いにも間もなく病気も回復し
・明治以前すでに
・明治以前にすでに
・すみずみまで浸み込む
・すみずみにまで浸み込む
・かくてパウロは叫んだ
・かくしてパウロは叫んだ
衍字は誤字に含まれる?
誤字・脱字といえば、衍字のような間違いを指すことも多いです。
「誤字・脱字」の中に「誤字」と「脱字」だけでなく、「衍字」も含まれるイメージです。
誤字や脱字と違って、衍字があまり知られていない理由は様々ですが、衍の漢字が難しい(漢検1級レベル)ため馴染みがないこともあります。
「これは衍字です」という使い方も普通はしません。「文字がダブっています」「文字が余計に入っています」というほうが一般的です。
また衍字や脱字を、誤字として解釈することもできます。
文字の定義や、誤字との境界に曖昧さは残りますが、誤字の中に、脱字や衍字も含まれるという解釈です。
▼ 次の例文で見ていきたいと思います。
正: 和歌山県にある熊野本宮大社
誤: 和歌山県にある熊野ノ本宮大社
誤 の「ノ」が衍字にあたりますが、広く捉えれば「熊野本宮大社」と書こうとして「熊野ノ本宮大社」に誤ってしまった(誤字)とも考えることができます。
広い意味でみれば誤字となり、部分的な間違いに限定するなら衍字とみなすことができます。
脱字も同様に考えることができます。
正: 和歌山県にある熊野本宮大社
誤: 和歌山県にある熊本宮大社
誤 は「野」の脱字になります。ただし、広く捉えれば「熊本宮大社」は「熊野本宮大社」の誤字ともいえます。
衍字と同様に、
広い意味でみれば誤字となり、部分的な間違いに限定するなら脱字となります。
以上のように文字の定義の曖昧さは残りますが、視点をどこにおくかで衍字や脱字を、誤字の一種とみなすこともできます。
まとめ(衍字の3つのポイント)
【1】衍字の意味
⇒ 語句の中に誤って余計に入ってしまった不要な文字
・衍字の例
ドラええもん
野比ののび太
【2】衍の漢字の意味
1. あまる/あふれる
2. おおい/おおきい/ひろい/ゆたか
【3】衍字の対義語(反対語)
⇒ 脱字(あるべき文字が抜けていること)
衍字の意味
〔「衍」は「余分の」の意〕 書かれた(印刷された)語句の中にまちがって入った、不要の字。