目 次
校正作業の進め方[校正の流れと種類]
原稿が執筆されてから出版されるまでの間にはさまざまな工程があります。校正もそのひとつですが、具体的にどのタイミングで行われるのかご存じでしょうか。
この記事では、出版における校正のタイミングや作業内容について解説します。自分が担当する作業が、全体の流れの中でどのような位置にあるのかを把握することで、段階に合わせた適切な対応ができるようになります。
1. 校正の流れ
校正の回数は会社や媒体、出版物の性質などによって異なりますが、複数回行う場合が多いです。1回目の校正を初校、2回目を再校、3回目以降は三校、四校……と言います。
出版における校正の基本的な流れと作業担当者を図にすると、次のようになります。
初校ゲラ出校
↓
初校校正(校正者)
↓
初校校正のチェック(編集者)
↓
著者校正(著者)
↓ 初校の修正指示を反映
再校ゲラ出校
↓
再校校正(校正者)
↓
再校校正のチェック(編集者)
↓
著者校正(著者)
↓ 再校の修正指示を反映
三校ゲラ出校
↓
三校校正(校正者)
↓
三校校正のチェック(編集者)
↓ 三校の修正指示を反映
念校出校
↓
念 校(校正者・編集者)
↓
校 了(校正すべき箇所がなくなった状態)
責 了(印刷会社の責任で校正を終了すること)
「校正者による校正 → 編集者による校正ゲラのチェック(→ 著者による校正)→ 校正を反映したゲラの作成」を1セットとして、このセットを繰り返していくと考えると分かりやすいでしょう。
1-1. 修正は著者校正で確定する
校正者が指摘を書き込んだゲラは編集者のチェックを受け、指摘の取捨選択や追加などをされたうえで著者に渡されます。ここで著者が行うのが著者校正です(「著者校」と呼ばれることもあります)。
著者校正では、著者が校正者や編集者の指摘を確認して採用・不採用を判断したり、加筆修正したりします。この著者校正によって確定された修正指示は、印刷会社や組版担当者に送られ、その指示を反映した次の校のゲラが作成されます。
特に校正未経験者や初心者の中には、校正とは文章をどんどん直していく仕事だと思っている人もいますが、ゲラの文言を修正できるのは原則として著者のみです。明らかな誤字脱字であっても、校正者が勝手に直してしまうことはできません。
校正者に権限があるのは、「ここは誤りではないでしょうか?」「ここはこのようにしてはいかがでしょうか?」といった提案・アラート出しをするところまでです。その指摘が著者校正によって採用されて初めて、ゲラが修正されることになるのです。
1-2. 校正の回数による作業の違い
初校のときは全体をまんべんなく確認しますが、再校では初校で修正された箇所を中心にチェックします。同様に、三校では再校で修正された箇所を中心に校正します。そのため、再校での指摘の量は初校より少なく、三校では再校より少なくなるというように、校正の指摘は回数を重ねるごとに減っていきます。
最後の校正である念校では、確認すべき部分は数か所となっているのが通常です。確認すべき箇所が少ないため、そのページのみを抜き出してチェックする「抜き念校」という形を取ることもあります。
また、上の図では一般的な流れとして初校と再校でそれぞれ著者校正が入るとしていますが、著者校正の回数は案件によって異なります。こだわりの強い著者であれば三校以降も著者校正を行うこともありますし、著者が多忙のため著者校正は1回しか行えないというケースもあります。
そのほか、初校の著者校正では全体を確認するが、再校では内容に深く関わる箇所だけ著者が確認し、誤字脱字のような部分は編集者に任せるというやり方を取ることもあります。可能であれば、編集者とコミュニケーションを取って著者校正のタイミングや流れを確認しておくと、より的確な校正ができるようになります。
1-3. 複数人で校正をする際のやり方
校正はひとりで行うことが多いですが、場合によっては複数人で行うこともあります。そのひとつが「読み合わせ校正」です。
読み合わせ校正とは、ひとりがゲラを音読し、もうひとりがそれに合わせてゲラの文字を目で追っていく校正です。音読はただ読み上げるだけではなく、「校正/構成」のような同音異義語や「沢/澤」のような字体の違いが判別できるように読まなければならないため、技術と慣れが必要ではありますが、読み合わせ校正を行うことで間違いを見つけやすくなります。
また、ボリュームのある案件の場合は複数人で分担して校正することもあります。分担して校正をすると、校正者のスキルに差があるのはもちろん、指摘出しの基準などにも個人差が出てきます。校正ゲラのクオリティをできるだけ均一にするため、校正者間でルールを共有したり、互いのゲラを見て意見をすり合わせたりすることが必要です。
そのほか、同じゲラを複数の校正者が並行して校正する場合もあります。この場合は、最後に全員の指摘をひとつのゲラに集約して納品します。集約する際は、新しいゲラに一から指摘を書き直すよりは、集約を担当する校正者が自分の校正ゲラに他の校正者の指摘を書き足していく形が多いようです。
2. 校正の種類
校正は、大きく「突き合わせ校正(引き合わせ校正)」「素読み」の2つに分けられます。
2-1. 突き合わせ校正
ゲラがその元になった原稿などと一致しているか、一文字ずつ確認する校正です。原稿が手書きされていた時代は、手書きの文字が一字一句間違いなくゲラに組まれているかを確認する必要があったため、制作工程の序盤に行われる重要な作業でした。
近年はほとんどの原稿がデータの形で作成されるようになっているので、そうした一文字ずつの突き合わせをする機会は減っています。ただし、突き合わせ校正そのものが不要になったわけではありません。
たとえば、著者校正ゲラの修正指示(赤字)が次の校のゲラに反映されているかどうかを確認する「赤字照合」という作業があります。赤字は手書きされることが多く、それをDTPオペレーターなどが手作業で反映させていくため、見間違いや入力ミスによる誤りが起きやすいです。そうした誤りを漏れなく拾うためには一字一句の突き合わせが必要になります。
そのほか、引用部分が出典と一致しているかの確認なども、広い意味では突き合わせ校正と言えます。
2-2. 素読み
原稿と突き合わせず、ゲラのみを読む校正です。現在の校正作業においては、素読み校正のニーズが多くなっています。
素読みでチェックするポイントには以下のようなものがあります。
・誤字脱字
・文章表現(主述のねじれ、慣用句の誤りなど)
・表記のばらつき(漢字の閉じ開き、算用数字・漢数字、正式名称・略称など)
・ゲラ内での整合性(時系列、数値の合計、図版と本文の対応など)
・体裁(章扉のデザイン、見出し類のフォント・文字の大きさ、柱の位置など)
誤字脱字や日本語表現のチェックのような「校正」としてイメージされやすい作業のほか、体裁の確認もここに含まれます。
おわりに
前述の通り、制作過程において校正をどのタイミングで何回入れるかは、会社や媒体等によって異なります。
そのため、実際の現場ではこの記事で解説した流れとは違う業務フローになっている場合もあるかもしれません。その場合も上記の流れを基本とし、その変形だと考えれば、自分の立ち位置が理解しやすくなるはずです。
ゲラに向き合って校正をしていると自分の世界に入り込んでしまいがちですが、大局的な視点を忘れず、今の段階で求められているのはどのような校正なのかを意識するようにしましょう。