箇所・個所・か所・カ所の違い[適切な表記と使い分け解説]

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箇所・個所・か所・カ所の違い[適切な表記と使い分け解説]

「箇所」「個所」「か所」「カ所」の言葉は、表記は違いますが意味はすべて同じです。いずれもある特定の場所や部分を表す言葉です。別の言葉で言い換えるなら、『場所・所・地点・点・部分・一部分・件・ポイント』などになります。

以下、「カショ」を漢字にした場合の適切な表記方法を、複数の書籍・国語辞典・公的サイトから紹介していきます。

[記事作成にあたっては、以下の書籍・辞書・サイトを参考にしています]

『公用文作成の考え方』(文化審議会建議),『記者ハンドブック 第14版』(共同通信社),『文研』(NHK放送文化研究所),『日本語表記ルールブック』(日本エディタースクール編),『漢字文化資料館』(大修館書店),『三省堂国語辞典 第八版』(三省堂),『新明解国語辞典 第八版』(三省堂),『デジタル大辞泉』(小学館),『明鏡国語辞典』(大修館書店),『大辞林 第四版』(三省堂),『岩波 国語辞典 第八版』(岩波書店),『大辞泉 第二版』(小学館)

「カショ」のおすすめの表記

「カショ」の表記にはいくつかありますが、次の基準で使い分けをしておけば間違いありません。

は『公用文』『放送』、は『記者ハンドブック』の基準にならったものです。

基本的には
「箇所」を使う。

数字に付く場合は
「か所」)もしくは「カ所」)を使う。

<例>

A  訂正箇所が、3か所あります。
   修正したい箇所は、この2か所だけです。

B  訂正箇所が、3カ所あります。
   修正したい箇所は、この2カ所だけです。

ABいずれにしても「箇所」を使います。数字に付く場合だけ、ひらがなかカタカナで表記が異なります。

「箇所」を基本としつつ、助数詞(※)には「か所」と「カ所」を使い分ける考え方です。
※数を表す語に添えて、どんな種類のものの値かを示す接尾語。

どちらかにルールを決めておくと、表記のバラつきもなくなり文章の統一感を損なうこともありません。「カショ」の表記には、他にも「ケ所」「ヶ所」「ヵ所」など種類が多いため、事前に表記に関しての使用ルールを定めておくことが大切です。

続いては、公用文や放送、新聞などでの「箇所・個所・か所・カ所」の使用基準を紹介していきます。

1.『公用文作成の考え方』(文化審議会建議)

「公用文作成の考え方(建議)」、p.28『算用数字を使う横書きでは、「○か所」「○か月」と書く』より一部抜粋。

算用数字を使う横書きでは、「○か所」と書く。
(ただし、漢数字を用いる場合には「箇所」のように書く)

(例)3か所 三箇所

常用漢字表には「箇」が採られているが、横書きで算用数字を用いる場合には「3か所」と平仮名を用いて書く。一般の社会生活でよく使われる「3ヶ所」「7カ月」といった表記はしない。概数を示すために漢数字を用いる場合には、「数箇所」「数十箇所」のように「箇」を使って書く。また、「何箇所」なども「箇」を用いる。

『公用文作成の考え方』(文化審議会建議)pdf

横書きにおいては、基本「箇所」を使い、算用数字に付く場合は「か所(ひらがな)」とし、漢数字に付く場合は「箇所」としてします。

公用文の表記は『常用漢字表』がベースとなっていることが多く、次の常用漢字表の使用例には「箇所」の表記が記載されています。そのため、公用文では「箇所」の使用が推奨されています。

 
『改訂常用漢字表』(文化庁HP)pdf

常用漢字表は、法令、公⽤⽂書、新聞、雑誌、放送など漢字使⽤の⽬安となるもので、表記の基準や参考として広く一般にも浸透しています。公用文に携わらない方でも参考になる部分が多くあるため一度は目を通しておくことをおすすめします。

2.『記者ハンドブック』(共同通信社)

「新聞用字用語集 記者ハンドブック」、『か』と『かしょ』の見出し語より。

(個)→ 箇 箇所、箇条
(箇)→ カ 〔数字に付く場合。カは大文字、ケは使わない〕3カ月、10カ所、数カ所

(個所)→ 箇所 箇所付け、疑問の箇所、訂正箇所、複数箇所
(箇所)→ カ所 〔数字に付く場合〕3カ所、数カ所

基本は「箇所」を使い、数字に付く場合は「カ所(カタカナ)」としています。

記者ハンドブックは新聞用字用語集とされていますが、新聞だけでなく一般の文章作成においても役立ちます。編集者やライターなど表記で迷ったときには、まず記者ハンドブックを参考にする方は多いです。

3.『文研』(NHK放送文化研究所)

NHK文研ホームページ、放送現場の疑問・視聴者の疑問、『[カショ]の表記』より一部抜粋。

放送では、「故障のカショ」などのときには「箇所」、「3カショ」のように助数詞として使うときには「◯か所」とひらがな表記する

『文研』[カショ]の表記

放送(NHK)が基準とする「カショ」の表記です。公用文作成とほぼ同様の考え方です。NHKのような大手メディアが発信する文章は多くの人が目にするため、表記も一般に浸透しやすい傾向にあります。見慣れている表記は違和感を持たれにくいため、特に表記にこだわりがないという人はこの基準に合わせておくとよいでしょう。

4.『日本語表記ルールブック』(日本エディタースクール編)

「日本語表記ルールブック 第2版」、p.36『○カ月、○カ所の表記』より一部抜粋。

ヵ所」の表記には、次のようにいくつかある。
箇所/個所/か所/カ所/ヵ所/ケ所/ヶ所/コ所

新聞は「カ」の使用が多い。片仮名にする理由はないので、「か」や「箇」としてもよい。横書きにする公用文の書き方では「1か月」である。

5.『漢字文化資料館』(大修館書店)

漢字文化資料館ホームページ、漢字Q&A『「何ヵ所」と「何ヶ所」の使い分けには、何か決まりがあるのですか?』より一部抜粋。

ナンカショを漢字で書きたいときには「何箇所」と書くのが、最も一般的だとされています。もちろん、「何か所」「何カ所」「何ヵ所」「何ヶ所」といった書き方がされることもありますが、本来は「何箇所」なのです。

『漢字文化資料館HP』漢字Q&A

6.「カショ」の表記:各国語辞典での定義

以下は各国語辞典の「カショ」の説明です。
(※「個所」に付く△や ▽、《 の記号は、常用漢字表にない音訓を表しています)

①『三省堂国語辞典 第八版』(三省堂)

1[箇所・個所]そのところ。場所。「不通箇所」
2[か所]接尾:場所などを数えることば。「五か所」
表記:2「カ所」「ヵ所」「ヶ所」「箇所」「個所」とも。

『新明解国語辞典 第八版』(三省堂)

【箇所・《個所】
何か問題になっている場所(部分)。〔かぞえるのにも用いられる〕
表記:古くから「(数字)」ヶ所」と書き、最近では「か所・カ所」とも書く。

『デジタル大辞泉』(小学館)

【箇所/個所】
1
[名]問題になっているその場所。「故障の箇所」
2[接尾]助数詞。数を表す漢語に付いて、特定の部分や場所の数を表す。「入り口を三箇所設ける」
補説2は「カ所」「ヶ所」などとも書く。

④『明鏡国語辞典』(大修館書店)

【箇所(個所)】〔名〕特定の部分・場所。
「重要な箇所を読み上げる」「訂正箇所」「災害が九箇所に及ぶ」
表記:特に、数字に続く場合は、慣用的に「か所」「ケ所」「カ所」「ヶ所」「ヵ所」などとも書く。

⑤『大辞林 第四版』(三省堂)

【箇所・個所】
1[名]限定された特定の部分・場所。「読めない箇所がある」
2[接尾](「か所」「ケ所」とも書く)助数詞。数を表す漢語に付いて、特定の部分や場所を数えるのに用いる。「二、三箇所誤りがある」

⑥『岩波 国語辞典 第八版』(岩波書店)

【箇所・個所】
1 ≪普通は連体修飾を受け「……箇所」の形で≫ ……である(と限定して述べた)ところ。「誤った箇所を正せ」「閲覧箇所」
2 ≪数量表現と結合して接尾語的に≫場所・地点を数える語。「十数箇所に及ぶ傷」

⑦『大辞泉 第二版』(小学館)

【箇所|個所】
1[名]問題になっているその場所。「故障の箇所」
2[接尾]助数詞。 数を表す漢語に付いて、特定の部分や場所の数を表す。「入り口を三箇所設ける」
類語:場所・所・地点・点・部分・部位・一部・一部分・一節・件・パート・セクション

「個所」の表記はダメ?

個数を表すときに「1個、2個」と『個』の漢字が付くのを見慣れているため、「1個所、2個所」としても何も問題がないように思えます。実際に使用されている文章も多く見かけます。パソコンやスマホで文字入力する際も、「かしょ」を変換すれば「個所」と出てきます。

ただ常用漢字表には、「個」に「カ」の読みはありません。

現在では常用外として「個所」の漢字に「カショ」の読みを当てはめています。一般的な文章において「カショ」を「個所」と表記するのは問題ありませんが、公用文や正式な文書など厳密に正確な表記が求められる場面での「個所」の使用は適切とは言えません。

おわりに

現在では「箇所」が正式な表記であり、公用文や公式文書での使用が推奨されています。公用文だけでなく、ビジネス文書や一般的な文書でも「箇所」の使用が望ましいです。一方、「個所」を「カショ」とするのは常用外の読みとなるため、通用として使用する分には大丈夫ですが、厳密には正確性を欠く表記となります。また、「か所」「カ所」は助数詞として使われることが多く、文体や場面に応じて適切な表記を選択します。

「箇所」「個所」「か所」「カ所」の使い方はどれが正しいというよりも、使用場面に応じて適切なものを使い分けると考えておくとよいでしょう。基本的には「箇所」を使用し、場面に応じて他の表記を使い分けるといった感じです。

・公用文・放送では、箇所/か所
・新聞では、箇所/カ所
・ビジネスシーンでは、箇所/か所  or  カ所
・一般的な文章では、箇所/個所/か所/カ所 から文体に合ったもの