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在宅フリーランスと正社員[校正者の働き方のメリット・デメリット]
「校正者」と聞いてイメージするのはどのような姿でしょう。出版社の一室で、数人で机を並べている姿でしょうか。あるいは、自宅でひとり黙々とゲラを読んでいる姿でしょうか。一口に校正者といっても様々な働き方があります。
こちらの記事は、正社員として出版社等の校閲部で経験を積んだ後、フリーランスの校正者として独立された方に寄稿いただいたものです。
正社員とフリーランス両方を経験しているがゆえに、双方のメリット・デメリットを熟知されています。これから在宅フリーランスの校正者を目指す方には為になる部分もあるかと思います。是非参考にしてみてください。
1. 正社員で働くメリット
<メリット>
1. 収入や業務量が安定している
校正者に限ったことではありませんが、正社員である大きなメリットは、やはり安定した収入が得られることです。また、自分で案件を獲得しなければ仕事がなくなるフリーランスに比べて、コンスタントに仕事を割り振ってもらえるのも利点です。
自分から営業をかけるのが得意な校正者は少数派のように思われるので、営業に神経をすり減らさずに業務に集中できるのはよい環境と言えます。
2. 周囲からの学びを得やすい
校正者としてスキルを磨くうえで、他者からの学びは欠かせません。誰からもフィードバックを得られないまま自己流で作業をしていると、独りよがりな校正になってしまいます。この点ではフリーランスよりも正社員のほうが恵まれていると言えます。
正社員の場合、フリーランスに比べて継続的な貢献が期待されているので、教育やフィードバックの体制が整っていることが多いためです。疑問が出てきた際に気軽に周りに質問できるのも、組織の中で校正をするメリットです。
特に校正未経験者、または初心者のうちは、出版社の校閲部など、経験豊富な校正者がいる環境に身を置くと得るものが大きいでしょう。
3. 設備が充実している
校正はまだ紙ベースでの作業が多い仕事で、プリントアウトやコピー、スキャンもしばしば必要になります。オフィスなら業務用のプリンターを使えるので、こうした作業もスムーズです。また、職場によっては辞典類をはじめとした蔵書が充実しています。赤ペンや鉛筆、消しゴム、クリップなどの文房具類もすべて備品として用意されています。
会社員時代は何気なく使っていた設備が、フリーランスになってみてそのありがたみを身に沁みることになりました。
2. 正社員で働くデメリット
<デメリット>
1. 他者との関わりでストレスを抱える場合がある
校正は人と接する必要のない仕事だと思っている方もいるかもしれません。確かに実作業についてはひとりで黙々とやる部分が多いですが、作業内容について疑問が出てきたときに問い合わせたり、納期が厳しい場合に交渉したりすることもあり、他者とまったく関わらないというわけにはいきません。
会社によっては、進行スケジュールの調整や、案件の担当編集者・外部の校正者とのやり取りも社内の校正者が行うことがあります。
特にスケジュールについては各部署にそれぞれ都合があるため、調整には苦労がつきものです。そういった部分でストレスを抱える可能性があることは、組織の中で校正をするデメリットと言えます。
2. 案件を選り好みしづらい
「短編よりは長編の校正が好き」「ノンフィクションが得意」など、校正者にはそれぞれ好き嫌い・得意不得意があります。
しかし会社の一員として校正をしている場合、得意なジャンルばかりが回ってくるとは限りません。案件の割り振りの都合によって、苦手な分野の案件を担当せざるを得ないこともあります。「そういう内容は苦手だから」と断りにくいのが、正社員であるデメリットのひとつかもしれません。
ただし、やむを得ず担当することによって経験の幅が広がったり、意外な得意分野を発見できたりする場合もあるので、捉え方によってメリットにも変えることができます。
3. 在宅フリーランスで働くメリット
<メリット>
1. 自分にとって最適な環境で仕事ができる
複数人が働くオフィスでは、空調や照明などが自分にとって快適とは限りません。電話の話し声が聞こえたり人の出入りがあったりして集中を乱されることもあります。在宅であれば、自分が仕事をするのに最適な環境を整えられます。楽な服装で仕事ができるのも、肩こりが職業病と言っていい校正者にとってはメリットです。
2. 他者との関わりが比較的少ない
在宅フリーランスの校正者は、正社員に比べてひとりで仕事をすることが多いです。たいていの場合は、クライアントから伝えられたスケジュールに従って作業を進めます。
作業について不明点が出てきた場合などに連絡することはありますが、編集者やほかの校正者等と密に連絡を取り合って進行を調整するようなことは、経験上ほぼありません。ひとりで黙々と仕事をするのが好きな人にとっては、ストレスの少ない環境でしょう。
3. 仕事に対する評価をダイレクトに感じられる
フリーランスはクライアントと直接やり取りをする分、自分の仕事に対する評価をダイレクトに感じやすいです。校正はなかなか表に出ることがない仕事であるだけに、反応を得られる機会は貴重です。一度仕事をした相手から再度依頼してもらえると嬉しいですし、仕事に対する自信がつきます。
4. 在宅フリーランスで働くデメリット
<デメリット>
1. 収入や業務量不安定
フリーランス全般に共通することですが、収入や仕事の量が一定しないことは不安材料となります。コンスタントに仕事を得るためには、複数のクライアントとつながりを持っておくのがよいでしょう。出版社や編集プロダクションのホームページをチェックして、外部校正者を募集していれば応募してみる、校正の案件を扱っている派遣会社に登録する、クラウドソーシングを活用するなど、アプローチ方法は多様です。
また、本来は正社員・フリーランスを問わず校正者として必要なことではありますが、ひとつひとつの案件を丁寧にこなすことが重要です。校正の技術が評価されれば、ほかの編集者等に紹介してもらえることもあるためです。クライアントが校正者を探す際には、人脈を頼りにすることがしばしばあります。目の前のゲラの精度を高めることが、その先の仕事につながるかもしれないという意識を持つようにしましょう。
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2. スキルアップしにくい
在宅フリーランスのメリットとして、他者との関わりが少ないことをあげましたが、これは見方を変えるとデメリットでもあります。ほかの校正者との接点が少ないということは、気づきや学びを得る機会が少ないということでもあるためです。
その一例が表記統一に関するテクニックです。近年ではゲラを現物だけでなくデータでも受け取り、データ内検索を活用して表記統一を行うという方法が浸透してきています。しかし、ずっと自分ひとりで校正をしているとそうした手法が存在することにも気づかず、目視での表記統一をし続けることになるかもしれません。
また、ほかの校正者の校正ゲラを見ると、目のつけどころや指摘の出し方について学びが得られますが、在宅フリーランスではなかなか見る機会がありません。特に実務未経験者や初心者の場合は、まずは出版社等でほかの校正者の仕事を見て学んだほうがよいでしょう。
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3. オンオフの切り替がしづらい
2020年以降の新型ウイルスの感染拡大によって、テレワークを経験した人が増えました。複数のアンケート調査で、テレワークのデメリットとして「仕事とプライベートの切り替えが難しい」ことが上位にあがっています。
> 日本労働組合総連合会「テレワークに関する調査2020」
> NTTコム リサーチ「テレワークと会社満足度に関する調査【前編】」
校正者についても同様に、在宅で仕事をしているとオンとオフの切り替えがしづらいのが難点です。特に校正は「ここまでやったら終わり」という明確な終わりが見えにくく、やろうと思えばどこまででもやることができ、逆に手を抜こうと思えばいくらでも抜けてしまう仕事です。集中力を保ち、精度の高い校正をするためには、自分なりの気分の切り替え方を見つけてメリハリをつけることが必要になります。
おわりに
以上、正社員と在宅フリーランスの校正を経験されている方から見た、働き方のメリットとデメリットの紹介でした。
1-2で紹介されているように、校正をするうえで他の校正者とのかかわりは非常に大切です。他の校正者が入れた赤字や疑問出しを見ることで様々な視点を吸収することができます。独学での数カ月の経験を一気に縮めるものになります。
また、校正の仕事を重要と認識している会社では、ノウハウの蓄積を必ずと言っていいぐらいやっています。ミスやクレーム、ヒヤリハットの共有、校正済みのゲラの保管、校正者間での勉強会などです。起こりやすい間違いの発見や作業の振り返りにもなり、仕事の効率化へとつながります。これは、4-2「在宅フリーランスのデメリット」で説明されているように一人では難しいものです。
「在宅フリーランス」と「正社員」、その人の働き方に対する考え方によってメリット・デメリットは違ってきます。ただ、これから在宅で校正の仕事を始めようと考えている方は、数カ月でも効果的なので他の校正者とのかかわりの中でスキルを磨いていくことをおすすめします。