文章の添削を受ける前にチェックするポイント[例文解説]

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文章の添削を受ける前にチェックするポイント[例文解説]

入学試験のための志望理由書や小論文、就職活動におけるエントリーシート、業務で作成する書類やメール文など、自分が書いた文章を、他者に添削してもらう機会は意外と多くあります。

添削を受けると、自分ひとりでは気づかなかった視点が獲得でき、伝えたいことがきちんと伝わる文章になっているか客観的に知ることができます。一方で、添削を受けても、初歩的な誤字脱字・体裁面の指摘ばかりを多く受けていると、肝心の内容面に踏み込んだ講評をもらうことができません。

添削の機会を大いに活用し、文章を改善していくために、自分で事前に確認できるところは確認しておきたいところです。

この記事では、添削を受ける前に、自身で見直しておくべきチェックポイントを紹介します。

「添削」を受ける前に「校正」をしよう

「添削」と似たようなイメージを持たれるのが「校正」ですが、両者の見られるポイントや意義はやや異なります。大まかに言うと、「校正」は文章の細部を見るミクロの視点、「添削」は文章全体の流れを見るマクロの視点で行われます。

「校正」では、誤字・脱字がないか、文法的な誤りはないか、表記の揺れや、体裁面の不備はないかなどを慎重に確認していきます。しかし、あくまで内容の方向性は文章作成者が決定し、校正者はその範囲内で正確性を高めるサポートをします。

一方の「添削」では、校正でチェックする項目のほかに、必要に応じて文章全体のテーマや、構成などにも講評を行います。「もっと別のテーマで書いたほうがいいのでは」「この構成では伝わりづらいから、結論を先に書いて」といったフィードバックは、「添削」のみで見られるものといえます。

添削を受ける機会を最大限活用するためには、まず自身で「校正」を行い、できる限りの問題点をなくした上で添削を受けましょう。そうすれば、添削者はテーマや構成に関する講評に集中でき、より質の高い講評をすることができるはずです。

セルフチェックのポイント1:正確な日本語で書けているか

ここから、添削を受ける前のセルフチェックポイントについて説明します。まずは、文章の正確性に関する項目です。

チェックポイント1

 1. 文体が統一されているか
 2. 誤字・脱字、表記の揺れはないか
 3. 文法上の誤りがないか

1. 文体が統一されているか

文体には、大きく分けて文末が「~です、~ます」となる「敬体」と、「~だ、~である」とある「常体」があります。読み手に丁寧に語りかけたいときや、親しみやすさを感じてほしいときには敬体、文章に信頼性や、説得力をもたせたいときには常体と使い分けるとよいのですが、一番避けなければならないのが両者の混在です。自身の文章の中で、敬体と常体が入り混じっていないかは必ず確認しましょう。

2. 誤字・脱字、表記の揺れはないか

誤字・脱字がないように確認すべきなのは言うまでもありませんが、表記の揺れは見落としがちなのでよく見直しましょう。下記に、表記揺れが起こりやすい例を示します。表記の揺れがあったときは、どの表記を使うか決め、統一を図りましょう。

・漢字とひらがな:「お客さま」と「お客様」など
・同義語:「会議」と「ミーティング」など
・外来語:「ユーザー」と「ユーザ」など
・送りがな:「見積もり」と「見積」など
・数字の表記:「3980円」と「¥3,980」

3. 文法上の誤りがないか

正確な文法で書くことができているかも、自分で見直すことのできるポイントです。特に下記のような誤りは多くみられるので注意しましょう。

① 列挙の表現

二つ以上のものを並列するときの「たり」には、二回以上で用いるという決まりがあります。

【例1】

×:外国籍の子どもには、日本語の習得が遅れたり、それによって教科学習の習得も難しくなる課題がある。

:外国籍の子どもには、日本語の習得が遅れたり、それによって教科学習の習得も難しくなったりする課題がある。

※「遅れる」「難しくなる」が並列されているので、「遅れたり」「難しくなったり」と二回「たり」を使わなくてはなりません。

【例2】

×:外国籍の子どもには、教科学習の習得が遅れたりする課題がある。

:外国籍の子どもには、教科学習の習得が遅れるなどの課題がある。

※「たり」は必ず二回以上で用いるため、単独で「遅れたり」と使うのは誤りです。「遅れるなどの」「遅れるといった」などの表現に直すとよいでしょう。

また、複数のものを列挙して書く際に、それらの品詞が揃っているかも確認しましょう。品詞の異なるものを列挙して書くのは誤りです。

【例3】

×:部門長として透明性のある人事評価や、チームの人間関係が円滑に進むために尽力した。

:部門長として透明性のある人事評価や、チームの円滑な人間関係の構築に尽力した。

※「人事評価」は名詞、「(円滑に)進む」は動詞です。この二つを列挙するにあたり、の文では名詞に統一しています。

② 助詞の「の」の三つ以上連続使用

助詞の「の」の連続は、一文の中で多くても二つまでにしましょう。三つ以上連続して使うと文章が間延びし、稚拙な印象を与えます。

【例】

×:今度のセミナーのプログラムの詳細を教えていただけませんか。

:今度開催されるセミナーのプログラム詳細を教えていただけませんか。

※「の」の連続使用を回避するには、言い換え(今度のセミナー→今度開催されるセミナー)を行うか、「の」の省略(プログラムの詳細→プログラム詳細)を行う方法があります。

③ 主語と述語のねじれ

文の主語と述語がかみ合っているかどうかも、重要な見直しポイントです。二人以上の主語になる人物が文に出てくる場合や、受け身の関係があるときにねじれが起こりやすいので注意しましょう。

【例】

×:アメリカ留学の経験は、自分のルーツを振り返ることができた。

:アメリカ留学の経験によって、自分のルーツを振り返ることができた。

④ 話し言葉の影響を受けた誤用

話し言葉では少しずつ見られるようになったものの、まだ定着しておらず、書き言葉としては不適切な表現があります。文章を書く場面では、書き言葉として適切な表現を使うよう留意しましょう。

【例1】

×:監督は代表チームにキャプテンをおかなかった。結果、各選手が自主的にチームを率いる姿勢を見せた。

:監督は代表チームにキャプテンをおかなかった。その結果、各選手が自主的にチームを率いる姿勢を見せた。

※文頭に「結果、」とだけ書くのは誤りです。「結果」は接続詞ではないため、「その結果」「結果として」などと書くようにします。同様に「なので」を文頭で使うのも誤りです。「なので」は本来「~なので」と、文の途中で用いる言葉です。

【例2】

×:近年はファストファッションでも、男女問わず着れるジェンダーレスな服が多く発売されている。

:近年はファストファッションでも、男女問わず着られるジェンダーレスな服が多く発売されている。

※「着れる」のように、「~できる」という意味を表す際に「ら」が抜ける「ら抜き言葉」は、書き言葉では不適切です。

セルフチェックのポイント2:論旨が明快になっているか

校正の視点で見直すことにより日本語の正確性を担保したら、次は文章全体の論旨が分かりやすいものになっているか確認しましょう。

チェックポイント2

 1. 結論が変わっていないか
 2. 一文が長すぎないか
 3. 接続語を適切に用いているか

1. 結論が変わっていないか

長い文章を書いていると、初めと終わりで結論が変わってしまっていることがあります。同じ結論になっているか、初めに問題提起したことに、きちんと結論を出せているかを見直しておきましょう。

2. 一文が長すぎないか

一つの文が長くなればなるほど、読み手が意味を理解するのが困難になります。読み手の負荷を下げるには、一文は長くても80字程度にとどめ、文を短く区切りましょう。

3. 接続語を適切に用いているか

接続語には、文同士、段落同士の関係性を整理する働きがあります。下記のような接続語を適切に使うことで、読み手が論旨をつかみやすくなります。

・具体例を挙げる:たとえば
・因果関係を示す:なぜなら、だから、したがって
・対比を示す:しかし、ところで、一方
・言い換えを表す:つまり、要するに

おわりに

以上、添削を受ける前のセルフチェックポイントを紹介しました。
人に文章を添削してもらうのは、自身の文章スキルを向上する貴重な機会です。その機会を最大限にいかすために、「添削されるまでもない」明らかな誤りをなくしておき、より踏み込んだフィードバックをもらえるように心掛けましょう。