推敲(すいこう)と査読(さどく)の意味と違い
推敲と査読ともに文章に関連する言葉です。2つとも似たような意味になりますが、大きな違いは、推敲は自分で行うものなのに対し、査読は他人が行うものということです。
<推敲>
→ 自分で行う文章の改善
<査読>
→ 他人(査読者)が行う文章の評価
以下、両者の意味を掘り下げてみていきたいと思います。
1.「推敲」と「査読」の意味
推敲は、文章の表現などを見直し、修正を加え練り上げることです。自分が書いた文章を何度も読み返し、改善していくことになります。ビジネスシーンでは、ブラッシュアップと同様の意味になります。
一方、査読は、学術雑誌に投稿された論文を、その分野を専門とする研究者が読んで内容の妥当性などをチェックし、掲載するか否かの判断材料にする評価や検証のことです。
2.「推敲」と「査読」の違い
推敲は、時間などの制約がなければ、何度も修正を加えることができます。自分が完成と思われる状態へと近づけていく行為です。
査読は、自分が書き上げたもの(完成形の状態)を第三者に判定してもらう行為です。そこで他人による評価を受けることになります。
査読は他人が行うため、査読をする「査読者」が存在します。一方で、推敲は自分で行うものなので、自分に対して「推敲者」と呼ぶことはなく、そのような言葉もありません。
以上のように推敲は自分が行う主観的な修正や改善であり、査読は他人が行う客観的な評価や検証であるという点に大きな違いがあります。
また、推敲は主に文章の正確性、読みやすさ、表現力を高めるために行われますが、査読ではそれらに加え学術的な価値も問われます。
3.「推敲」と「査読」の使い分けと例文
推敲は漢字が難しく何か特別なことのように思えますが、「推敲を重ねる」という行為は、その行為に言葉付けをしていないだけで、誰もが小さい頃からやっています。
学生の頃、自分が書いた文章を何度も読み返して、おかしな箇所がないか確認したと思います。文の流れがスムーズか、わかりやすい構成になっているか、適切な表現が使用されているか、正しい情報かなど。
確認のポイントは成長するにつれて違ってきますが、文章をより良くするという目的は常に同じです。それが推敲にあたります。
推敲の使い方としては、
「来週の会議で発表する資料を何度も推敲する。」
「推敲を重ねたので、いい文章に仕上がった。」
推敲を行うのは常に自分です。
「先輩にこの資料を推敲してもらう。」としても
言いたいことはわかりますが、このような使い方はしません。
この場合は、
・添削してもらう
・見直してもらう
・チェックしてもらう
などで言い換えます。
対して、査読は、第三者(主に専門家)に行ってもらうものなので、
「自分で査読する」という表現はしません。
査読は、一般的に使用される言葉というよりは限定された場面での使用になります。
ちなみに、似たような意味の言葉に「校正」があります。
校正は、自分にも他人にも使えます。
「自分で書いた小説の校正をする。」
「友人の書いたレポートの校正をする。」
▼「推敲」と「査読」の辞書での意味は次のようになっています。
<推敲>
→ 詩文の字句や文章を十分に吟味して練りなおすこと。
<査読>
→ 学術誌に投稿された学術論文を専門家が読み、その内容を査定すること。
【出典:デジタル大辞泉_小学館】
「推敲」を使った例文
• 何度も推敲して、より良い文章にする。
• メールを送るときには忘れずに推敲しましょう。
• 推敲することで、文章の表現力を高めることができる。
• 自分で書いた文章は、何度推敲しても不安だ。
• 推敲を重ねることで自分の文章を見つめ直すことがきる。
「査読」を使った例文
• 論文を専門家に査読してもらう。
• 学術雑誌に投稿する前に、査読を受ける必要がある。
• 研究論文の査読には、専門的な知識が必要だ。
• 査読依頼を受けたが断った。
• 査読結果に基づいて論文を修正した。
おわりに
推敲は自分自身で行うもので、主観的な文章の改善になります。一方、査読は第三者による客観的な文章の評価になります。
推敲 → 自分で行う文章の改善
査読 → 他人が行う文章の評価
推敲も査読も目的は似ています。文章の問題点を発見し、内容の改善につなげていきます。2つとも文章の質を高めるのに有効な手段です。