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校正の課題:給与が低く抑えられる背景と価格の見直しについて
どのような仕事においても「お金」は避けては通れないテーマです。ネットでは「○○の仕事って儲かる?」「年収は?」「将来性は?」などはよく検索されるワードです。
フリーランスの方なら「お金」は自身の生活に直結するテーマです。月給で働く正社員であっても、会社には目標とする利益があり、「お金」の問題は自分だけの問題ではなく、会社全体の利益や他の社員にも影響します。どの仕事においてもお金は切実な問題です。
ただお金の重要性はわかっていても、なぜか「お金に関する話題」は切り出しにくいものです。
こういった状況は校正の仕事にも当てはまります。
1. 校正費が低く抑えられる背景
「校正は儲からない」「割に合わない」という話を耳にすることは多いですが、これは校正費だけが特別に削減されているわけではありません。
1. 制作費の削減
校正費が低い理由の背景には、広告・出版業界全体で制作費そのものが圧縮されている現状があります。制作全体のコスト削減が求められる中で、競争が厳しくなり受注単価を下げざるを得ない状況にあります。校正費も例外なくその影響を受けています。
ウェブ制作の現場においても一昔前は高値で受注できることが多かったのに対し、制作スキルを持った人材が増え便利なツールが多く登場し競争が激しくなり、その結果、価格を下げて受注することも現在では珍しくありません。
2. 校正の価値が見えづらい
また校正費が低く抑えられる大きな要因として校正の「見えない努力」が評価されにくいことがあげられます。
校正者が行う仕事は、「間違いがない正確な文章」を生み出すことが前提です。しかし、「ミスがない」という結果は、依頼者からすれば「当然あるべき状態」と認識されるため、校正者の努力の成果であることが見えにくい状況にあります。また校正は、成果を数値化するのが難しい仕事です。ミスがあって実損額を知ってはじめて、価値が再認識されることも多いです。
この「見えない努力」が適切に評価されないことは、校正の価値を不透明にする大きな要因です。この価値の見えづらさは、企業の合理化の対象にもなりやすいです。
2. 校正の仕事は効率化しづらい
校正の仕事には、注意深く緻密な作業が長時間求められるため、大変な労力を要します。しかし、給与が労力に見合わないことも多く、「損することはあっても得することが少ない」という状況に置かれがちです。そのため、このような労働環境に見切りをつける方も少なくありません。
また、校正はミスと隣り合わせでプレッシャーのかかる仕事でもあります。時間に追われながらも、一定の品質を保たないといけない重圧に耐え仕事を進めることも多いです。ですが、それに見合った給与が得られず、次第に心身をすり減らしてしまい校正の仕事を辞める人も出てきます。
そこで、給与が増えないなら時間単位の金額を改善すべく効率化するという対策が考えられます。ただ校正ツールやAIを活用したところで、多少の効果はあっても劇的な変化は難しく、思うようにいかないこともあります。
校正の仕事は、人の目が必要な部分が多く、一つ一つのタスクを切り分けできないこともあり効率化が難しい仕事の一つです。文章の細かいニュアンスや文脈の理解は、現段階ではツールやAIではカバーしきれないことも多く、人の力に頼らざるを得ません。
全体の制作費が下げられる中で、こういった状況ではますます儲からない仕組みとなります。
そこで「価格の見直し」という選択が考えられます。
3. 価格の見直しのタイミング
時給や単価の値上げに関して、派遣社員であれば、派遣会社の担当営業が間に入って交渉してくれるのでストレスも少なくてすみます。
フリーランスで働く方、特に複数のクライアントと直接やり取りする機会が多い方は、価格の見直しを依頼する場面が年に何度かはあると思います。
価格の見直しを持ちかけて、すんなりと交渉が成立するケースもあります。なぜなら、発注側は予算に多少のバッファ(余裕)を持っているケースがあるからです。場合によっては、この案件は厳しいけど、この案件でならいいというケースもあります。
労働環境の変化、時代の趨勢など、価格の見直しが必然となる状況はあります。安易に妥協せず、価格の見直しを業務の一部と捉え淡々と行動することがストレスを軽減させるポイントです。
またタイミングも重要です。具体的には、以下のような場面で価格の見直しを行うのが最適です。
- 新たな仕事を受ける際
- 契約更新時
- 担当者が変わった際
- 制作環境が変わった際
- 業務内容が追加された際
- 人員が減り負荷がかかると想定される際
- 依頼された作業量が当初の想定よりも増えそうな場合
- 自分のスキルが他の校正者に比べ高いと評価された際
- 業務に活かせる新しい資格やスキルを取得した際 など
さらに、金額の引き上げだけを要求するのではなく、作業量の調整、作業範囲の見直しなどで負担を軽減し、時間当たりの単価を上げる案もあります。依頼側が受け入れやすい代替案を用意しておくと安心です。
交渉の際にも単に「上げてほしい」ではなく、具体的な希望額、仮に自分の要望が無理であった場合、どこまでなら妥協できるかも事前に押さえておくとよいでしょう。
価格の交渉はストレスのかかることですが、間違いなく言えるのは、交渉のタイミングを逃すとそのままズルズル言い出せない状態が続きます。
そして、適切なタイミングを逃し後々になって価格交渉をするのは、最初にするよりもかなり困難になります。
4. 金額の読みずらい校正の仕事
校正は案件によって、作業方法や確認すべき項目が変わることが多く、ページ単価が算出しづらいという悩みがあります。そこで「総額でいくら」という形で契約が決まるケースも多いです。
また、案件ごとに求められるレベルも異なるため、統一した単価を設定するのも難しい状況です。
こうした場合には、初期の見込み費用と作業量に想定以上のギャップが生まれるリスクがあります。
仮に依頼者が想定していた金額と掛かった校正費にギャップあった場合、いらぬ軋轢を生む原因となります。たとえ適正な校正金額であったとしても「高い!」という依頼者は必ずいます。
こういったケースを避けるためには、初期見積もり、中間見積もり、最終見積もりなど何段階かに分けて見積りの提出をするようにするか、ある一定の金額を超えそうな際は予算の調整や作業内容を検討してもらうなどの対策が必要です。これは、作業の途中からではなく事前に依頼側と共有しておくことが大切です。
依頼者目線でいえば、金額が膨らんだ際、校正作業がすべて終わってから最後に見積もりが送られてくるのと、事前にある程度の金額を把握できるのとでは、仕事をしていて安心感が違ってきます。
5. 自分のレベルを知る
生成AIの「恩恵」と「弊害」を直撃しているライター業界も、単価が低いといわれる仕事の一つです。一文字何円という依頼形式はよく見かけます。
不特定多数の方に仕事を依頼することができるクラウドソーシングのサイトでは、ライティングの仕事を受ける側がプロフィールに『文字単価○円未満ではお受けできません』というように明記していることがあります。
金額をしっかりと明示しているのは、これ以下の単価では自分のクオリティが担保できないというラインを自覚している証拠であり、時間と予算のビジネス感覚を持っている証です。仕事に対して自分を安売りしない真摯な姿勢がうかがえます。
どうしてもやりたい仕事や、経験を積むためなど明確な理由があるならいいですが、むやみな単価の引き下げは長期的に見れば得をすることはありません。
おわりに
校正の仕事は、文章の正確さや品質を支える大切な役割を担っています。しかし、その価値が十分に理解されていないことがあります。
ただ、すべての企業や人が校正の重要性を理解していないわけではありません。校正者の見えない努力や、その価値をしっかりと理解してくれる企業や人も存在します。
安心して働きながら、高い品質を保っていくためにも、働く環境や待遇の改善を少しずつ進めていくことが大切です。