学校教材の校正で押さえておきたいポイント[様々な場面で必要とされる校正]

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学校教材の校正で押さえておきたいポイント[様々な場面で必要とされる校正]

校正には様々なジャンルがありますが、この記事では教科書や参考書などの「学校教材の校正」について解説していきます。「教材の校正をやってみたい」「ほかの校正と何か違いがあるのだろうか?」と思われている方は参考にしてみてください。

学校教材の校正は、原稿通りに反映されているか、不備や誤りがないかなどを確認する点では、書籍や雑誌、カタログなどの一般的な校正と同じです。

ただし教材の場合、教科や学年、準拠する教科書によって用字用語が異なるなどの特殊なルールがあります。また、デザインや文字の大きさ、色遣いなど、見た目の整合性がとれているかという部分の確認作業も多く発生します。

1. 作業範囲の確認について

ファクトチェック(事実確認)や解答の検証は、教員・塾講師経験者などの教科知識がある方や、学習指導要領の内容を熟知した方が行うことが多いです。その場合、校正者はファクトチェックや解答の検証以外の一般的な校正作業(原稿照合・用字用語の統一など)を行うことになります。

学校教材の校正では、教科の知識を持ち合わせていることが大きな強みとなります。実際に校正者が各教科に詳しいことを前提にしているクライアントは存在します。しかし、教科知識がなくても校正可能なケースも多数あります。

そのため教材の仕事を引き受ける際には、教科の知識が必要なのかどうか、何をどこまで見ればいいのかなど、校正の作業範囲をしっかりと確認しておきましょう。

2. 漢字の使い方(ヒラク・トジル)/ルビのチェックついて

学校教材の場合、何年生でどの漢字を学習するかが決まっているため、該当の学年で未習の漢字に対しては平仮名で表記する(ヒラク)、ルビを振るなどの作業が発生します。

該当学年で既習か未習かということを一つずつ確認しなければならず、時間も手間もかかるため、通常の校正作業とは別進行でルビチェックを行うケースが多いです。依頼された校正業務に、このようなルビに関する作業が含まれているのかどうかについても確認するとよいでしょう。

3. 校正に取り掛かる前に確認すべきこと

学校教材の校正では、原稿類が多い傾向にあります。例としては、基本的な赤字原稿のほかに図版原稿やWord原稿、フォーマット見本などがあげられます。

何種類もの原稿が存在する場合には材料の不足も起こりやすくなります。校正作業に入る前に、校正紙や原稿類がひと通り揃っているかを確認するようにしましょう。足りないものや原稿の不明点があれば、速やかにクライアントに連絡しましょう。

4. 校正の観点

教科や準拠する教科書などによって異なりますが、大まかな校正のポイントは以下のようになります。

① 教科書の場合

教科書を校正する際のポイント

1)フォーマット … 指定通りに組版されているか(フォーマット見本がある場合)
2)ノンブル … 連番になっているか、位置・大きさ・フォントが揃っているか
3)柱 … 内容が正しいか
4)ツメ(インデックス)… 内容・色が正しいか
5)コラム(囲み記事)… 色・大きさなどが全体で揃っているか
6)本文の行間にある情報 … 参照ノンブルなど
7)図版 … グラフは合計が100%になっているか、連番になっているか、フォントが揃っているか、断ち落としの確認

6)本文の行間にある情報 』について補足すると、社会科の場合は参照ノンブルのほかに、関連する図版の番号、人物の生没年や在位期間などが行間に記載されることがあります。文字の追加や削除の過程で行間の情報同士が重なってしまうことがあるため、文字の重なりに注意しましょう。

7)図版 』については、社会科の場合では地図や年表の校正が発生します。地図は、国名・国境・河川などの名称や位置が正しいか、色分けが合っているかなどをチェックします。年表は、時系列順になっているか、本文との整合性はとれているかなどを確認します。

教科書の改訂の場合、赤字の突き合わせ校正(引き合わせ校正)が多く、赤字の見落としには特に注意が必要です。小さな字で書き込まれていることも多いため、拡大コピーをする(※秘密保持契約によってコピーが禁止だったり許可が必要だったりする場合があります)、ルーペで確認するなどして、入念にチェックするようにしましょう。

また、多くの教科書では正字と俗字の使い分けがされています(「二点しんにょう」と「一点しんにょう」など)。こうした使い分けがあるということも念頭に入れて作業する必要があります。

② 参考書や模試の場合

参考書や模試を校正する際のポイント

・問題冊子

1)版面 … 紙面の各パーツの位置が合っているか
2)大問番号・小問番号 … 連番になっているか、フォントが揃っているか
3)選択肢の番号や記号 … 連番になっているか、フォントが揃っているか
4)頭出し・空きスペース … 段落の位置が揃っているか、アキが合っているか
5)ノンブル … 連番になっているか、位置・大きさ・フォントが揃っているか
6)柱 … 内容が正しいか
7)ツメ(インデックス)… 内容・色が正しいか
8)図版 … グラフは合計が100%になっているか、連番になっているか、フォントが揃っているか
9)配点・合計点 … 点数が合っているか検算する
10)文体や設問文の統一 … 文体が揃っているか(例:「あとの問いに答えましょう」/「次の問いに答えなさい」)

・解答用紙/解説

1)解答欄の大きさ … 解答を書き出す大きさが適しているか
2)指定の語句が使われているか …「△△の語を用いて説明しなさい」などの場合、「△△」の語句が使用されているか
3)解答例の文字数が合っているか … 記述・論述問題で「〇字以内で説明しなさい」などの場合、文字数が合っているか

参考書や模試の校正は教科書の場合と重複する部分も多いですが、全体を通して形式が正しいかを確認する「形式チェック」の作業割合が高めです。

その他の注意点

その他校正する際のポイント

校正者は確認した証拠として、原稿にレ点などのチェックを入れることが多いと思います。学校教材の校正に限りませんが、「チェックは小さく入れる」「指定した色のマーカーで入れる」「書き込みは一切不可」などのルールが存在する場合もあるため、校正作業の前に確認しておきましょう。

また、デジタル化の流れで、最近の学校教材では動画や音声などにアクセスできるQRコード(二次元コード)の掲載が増えています。コードの読み取り確認を校正者が行うのかどうかという点も事前に確認しておくとよいでしょう。

おわりに

    学校教材の校正とほかの媒体の校正との違いは、ルールや校正の観点が特殊だというところにあります。しかし、こうしたルールも一度経験して慣れてしまえば怖くありません。教員免許や教科知識を持っていなくても校正可能な案件もあります。教材校正の際には、上で述べたルールや校正の観点をぜひ参考にしてみてください。