目 次
Web校正で押さえておきたいポイントと見落としを防ぐテクニック
「Webの校正のやり方ってこれであってるのかな」
「どういうポイントに注意したらいいんだろう」
「見落としがないか不安」
「効率よく校正作業を進めるポイントを知りたい」
このような悩みを持っている方におすすめの記事です。
基本的なチェックポイントをしっかり押さえておくことで、校正時の見落としを防ぐことができ、かつ効率よく作業できるようになります。
この記事では、Web校正で基本とされるポイントを紹介しています。チェックリストのように校正作業の確認や振り返りにお使いください。
▼ 次の3つの章にわけてを紹介したいと思います。
A. Web記事の校正でチェックする基本ポイント7つ
B. Web記事の校正で見落としを防ぐために使えるテクニック
C. Web記事の校正ではコメント(疑問出し)に気を付ける
チェックポイントが多くあるように思えますが、実作業ではそれぞれの項目を一つ一つ順にやっていくことです。決して一度にすべての項目をやろうとしないこと、これが最大のポイントです。全部を一度にやろうとすると必ず何かが疎かになってしまいます。これはWebの校正でも紙媒体の校正でも一緒です。大事なポイントです。
A. Web記事の校正でチェックする基本ポイント7つ
▼ Web校正をするときに押さえておきたいポイントは次の7つです。
1. 誤字脱字がないか
2. 表記ゆれがないか
3. 同じ語尾を連続して使用していないか
4. 文章のねじれを起こしていないか
5. 数字に矛盾がないか
6. 固有名詞が合っているか
7. レギュレーションにそって書かれているか
A.Web記事の校正でチェックするポイント7つ
1. 誤字脱字がないか
記事の内容がどんなに素晴らしくても、誤字脱字が目立つとその記事の良さを損ないます。あまりにも誤字が多いと、掲載メディア・企業の信用問題にもつながりかねません。まずは誤字脱字のない記事になっているか、一字一字、文頭から文末までしっかりチェックしていきましょう。コツとしては、短時間で何度も読み返すよりも、ある程度時間をおいてから読み返すのが効果的です。
2. 表記ゆれがないか
表記ゆれとは、ひとつの言葉に対して複数の表記パターンがあることをいいます。
具体的には次のようなものです。
【よく出てくる表記ゆれパターン】
① 英単語の表記ゆれ
例:WEB/Web/web
② 漢字の表記ゆれ
例:できる/出来る わかる/分かる
③ カタカナの表記ゆれ
例:サーバー/サーバ サステナブル/サスティナブル
記事内に表記ゆれがあったとしても間違いではありませんが、多いと読みづらい場合があります。特に固有名詞系の表記にバラつきがあると読者に違ったものと認識される恐れがあります。意図的に使い分けていない限りは、できるだけ表記ゆれを直し整った文章に仕上げるようにしましょう。
【関連記事】
> 校正・校閲の表記ゆれチェックはPDFで解消![やり方解説]
> Wordで校正・校閲:文章校正機能の使い方(詳細設定~スペルチェック/文章校正のやり方まで)
3. 同じ語尾を連続して使用していないか
まずは次の例文をご覧ください。
<例文>
文章校正では、まず文章を一読します。
次に気になる箇所をチェックします。
必要であれば事実確認もします。
この例文のように語尾に同じ語が連続していると、文を読んだときに単調な印象を受けます。指摘する目安としては、語尾に「ます」や「です」などが3回以上続くときがいいかもしれません。
4. 文章のねじれを起こしていないか
主語と述語の関係が文法的におかしくなることを、「主語と述語がねじれている」などといいます。
<例文>
私の日課は、毎朝1時間ウォーキングをします。
主語が「私の日課」に対して、述語が「します」となっており、意味が通じなくなっています。文章のねじれは、主語と述語がかみ合っていないために起こってしまいます。例文のような短い文だとすぐにおかしいとわかりますが、長文になると気づきづらいことがあります。
日本語の厄介なところですが、仮に主語と述語がねじれていても意味が通じることもあるので、ねじれに対して違和感が起こらないこともあります。特に長文の場合は多いです。
校正の際には、このような主述の関係がおかしい箇所がないか注意するようにしましょう。コツとしては、一つの文を全部読んで判断するというよりも、一つの文の主語とそれに対応する述語だけを見ればわかりやすいです。
おかしい場合は「主述関係がおかしくなっています」「主語と述語が対応していません」などと指摘します。文の一部を変えるだけで簡単にねじれが解消するようなら、代替文を提案してあげると親切です。
5. 数字に矛盾がないか
Webの記事をチェックしていると「見出しでは5つと書いてあるのに、本文では4つしか書かれていない」というケースが結構あります。
Webの記事でこの手の間違いが多いのは、紙媒体とは違い全体を俯瞰しづらいことが要因となっているからかもしれません。このような間違いは、文章の削除や追加を繰り返しているとよく起こります。
数字が出てきたら、その数字が正しいか必ずチェックするようにします。このチェックは、校正において鉄板の確認ポイントです。
6. 固有名詞が合っているか
人名や作品タイトルなどの固有名詞に対しては、一層注意が必要です。自分の記憶に頼らず、公式サイトや辞書での確認が必要になってきます。一字一字を確実に目で追って、丁寧にチェックしていきましょう。たとえば、作品紹介の記事で作品名が間違っていると大きなクレームにつながります。
7. レギュレーションにそって書かれているか
レギュレーションとは、そのWebメディアごとに決められた執筆方法や表記ルールをまとめたものです。細かくうと、文字の大きさや使用される色、アキ幅なども含まれます。Webメディアによってはレギュレーションが用意されていることがあります。
その通りの記事になっているか入念にチェックしていきましょう。仮に間違っているとWebメディア全体のイメージを損なうことになりかねません。レギュレーションは、手元に置いていつでも確認できるようにしておくのがおすすめです。
以上の7つの項目を、Web校正の際は一つずつ順にやっていきます。
くれぐれも同時に全部を確認しないようにしましょう。
B. Web記事の校正で見落としを防ぐために使えるテクニック
▼ 前述した7つのチェックポイントを見落とさないためのコツは以下の3つです。
1. 文書内検索を使う
2. 読み上げ機能を使う
3. デバイスを変えてチェックする
B.Web記事の校正で見落としを防ぐために使えるテクニック
1. 文書内検索を使う
表記ゆれのチェックや語尾連続をチェックするのには、文書内検索が便利です。
【表記ゆれをチェックする方法】
① 原稿を読んでいるときに、あらかじめ気になる語句を書き出す(例:とき/時)
② 検索窓に気になる語句を入力
③ いずれの語句が出てきた場合は、コメントで表記ゆれがある旨を指摘します。
【語尾の連続をチェックする方法】
① 検索窓に「。」(句点)を入力
② 語尾だけを読み上げて、複数回連続で同じ語句が出てきていないか確認します。
ただ同じ見出し内で複数回以上の場合なので気を付けましょう。3つぐらいが適当です。
2. 読み上げ機能を使う
自分で声に出して読むのも一つの方法ですが、作業環境により音読が難しい場合は、ツールを使い読み上げるのがコツです。イヤホンを使えば周りの邪魔にもなりません。今では、読み上げ機能も進化しているので、校正で使えるツールの一つです。
視覚のみならず聴覚も使うことで、通常とは違った感覚で文字を見られます。正しく書けていないとうまく読み上げてくれないため、間違いに気づきやすくなります。文章のリズム感(読みやすさの)のチェックにも役立ちます。
【関連記事】
> Chromebookでテキストを読み上げる(公式サイト)
> ワードの音声読み上げ機能でミスを防ぐ[動画で解説]
3. デバイスを変えてチェックする
Web記事の校正をパソコンで行った後は、媒体を変えて再度記事のチェックをすることがおすすめです。環境を変えることで見方を変えることができます。
たとえば、
① スマートフォンやタブレットでチェックする
② 紙にプリントアウトする
などの方法があげられます。
① スマートフォンやタブレットでチェックする
スマートフォンやタブレットでチェックするのが有効な理由は、必ずしも読者は記事をパソコンだけで見るわけではないからです。読者が実際記事を読むであろうシチュエーションを想定することができます。読者と同じ目線で記事を読むことで気づける利点があります。
パソコンの画面と画面サイズが変わることで、画像やイラスト、表組みの見やすさ、文の改行位置などがおかしくなっていないかわかります。またスマホのダークモードなどを使えば、さらに文章の見方を変えてチェックすることができます。
物理的に文章への見方を変えることで、記事への視点が変わってきます。おかしな箇所をより見つけやすくなる可能性があがります。
② 紙にプリントアウトする
パソコンの画面でチェックしたときよりも、紙でチェックしたほうが間違いに気づきやすくなります。これは、紙のほうが俯瞰して客観的に見られることによるものです。
紙の理解度については脳科学の研究でも立証されています。
【参考:「紙媒体の方がディスプレーより理解できる」 ダイレクトメールに関する脳科学実験で確認|ニュースリリース:2013年|トッパン・フォームズ株式会社 (toppan-f.co.jp) 】
4. Google検索をうまく使う
① 完全一致で検索(知りたい語句だけを検索)
調べたい語句を引用符(“ ”)でくくると、その語句と完全に一致するもののみを検索することができます。活用法の一例として、「てにをは」に迷った際の使い方を紹介します。
たとえば「病院を受診する」「病院に受診する」のいずれが適切か迷ったとします。それぞれを引用符でくくってGoogleで検索すると、「“病院を受診する”」は約250万件、「”病院に受診する”」は約45万件ヒットします。
加えて、それぞれの検索結果の上位10件を見ていくと、前者には政府や厚生労働省のホームページが含まれています。後者にも病院のホームページなどが含まれてはいますが、ヒット件数と総合して考えると「病院を受診する」のほうがより適切だと判断できます。
(※検索数が多いことは一つの判断基準となりますが、検索数が多いからといって正しい表現であるとはいえません)
② マイナス検索(知りたくない語句を排除)
語の前に半角のマイナス(-)をつけて検索すると、その語を含まない検索結果が得られます。ファクトチェックの際、同姓同名の別人がヒットしてしまう場合などに使うと便利です。
たとえば、広島県府中市について調べる際、「府中市」のみで検索すると、同名の別の市である東京都府中市もヒットしてしまいます。「府中市 -東京」と検索すれば、東京都の府中市がヒットする率が大幅に下がり、検索の効率がアップします。
③ 電卓機能
校正においては、割合の合計を確認するなど、電卓を使う場面があります。数が小さければ通常の電卓で事足りますが、宇宙科学などの分野では桁が大きすぎて対応できないことがあります。そうした場合に役立つのが検索エンジンの電卓機能です。
Googleの検索ボックスに数式を入力して検索すると、計算結果が表示されます。あるいは「電卓」と検索しても、電卓のキーが表示されて使えるようになります。
この電卓では、大きな数は「2.5e+13」のように表されます。eは指数を表し、その後の数字の数だけ10をかけることを意味します。2.5e+13は2.5に10を13回かけた数、つまり25兆です。この機能を使えば、桁が非常に大きな数であっても計算することができます。
C. Web記事の校正ではコメント(疑問出し)に気を付ける
Web校正では、文章のおかしな点を指摘するだけでなく、明らかな間違いであれば直接修正することを求められる場合もあります。
紙媒体の校正では間違いに対して赤字を入れるだけですが、Webでは変更履歴の機能を使える(※一部のツール)ので誰がどこを変更したか容易にわかります。後から第三者の再チェックも可能です。また明らかな誤字脱字であれば、見つけた本人が直接修正しほうが効率が良いということもあります。
ただし、誰が見てもおかしいと思える間違いに対しては訂正可能ですが、自分だけでは判断がつかないものは、コメントで著者や担当者に指摘します。環境にもよりますが、時には、文の変更の提案をするのもWeb校正者の仕事の一つになることがあります。
▼ コメント(疑問出し)を出す際に気を配る点が2つあります。
1. コメント文や提案はやわらかい表現で伝える
2. 初校・再校など段階によってコメント量を変える
C.Web記事の校正ではコメント(疑問出し)に気を付ける
1. コメント文や指摘や提案はやわらかい表現で伝える
Web校正では修正箇所や提案内容をパソコンの文字で伝えるため、機械的な冷たい印象になりがちです。紙媒体のように手書きでないため、文のニュアンスがわかりづらいこともあります。
たとえば、Aの文でなくBのような伝え方が好ましいです。
△ A「読みづらいので○○に修正しますか?」
○ B「○○にするとより読みやすくなると思われますが、いかがでしょうか?」
Aの文では「~づらい」のようなマイナスの言葉が入っていることで、上から言われている印象を受けることがあります。受け手にとっては少しきつい印象を受けることもあります。
一方、Bの文では「~しやすい」というプラスの言葉に置き換えています。同じ内容でもポジティブな言葉に変えるだけで、印象がガラリと変わってきます。
またオンライン校正ツールなどでやり取りする場合なら、文字の色やフォントを変えることができます。そのようなWebならではの機能を使って円滑なやり取りをすることも可能です。※ただ、やりすぎるとかえって、くどくなるのでほどほどにしておきましょう。
コメントを出す際、必ずしも著者や担当者にへりくだった表現にする必要は全くありません。コメントを受け取る側の気持ちを最大限配慮した言葉遣いを心掛けておきましょう。
2. 初校・再校など段階によってコメント量を変える
初校では、記事全体をまんべんなくチェックしますが、再校では初校で変更された部分やその周辺を重点的に確認し、全体の整合性を考えつつ読み返します。それ以降も同様に、前の工程で修正が入った部分を中心に確認し読み返します。そのため校正からの指摘は基本的に、初校より再校のほうが少なく、それ以降も工程が進むほど徐々に減っていくものです。
また、初校と再校以降では、疑問の質も異なってきます。初校では誤字脱字のほかに文法的な誤り、全体の整合性にかかわるような指摘などをしますが、再校以降では誤字脱字のような致命的な部分の指摘が中心になります。
工程が進むにつれ記事公開までの日が迫ってきます。間際になって大幅な修正が入るのは避けたいので、明らかな誤りでなければ指摘を出しても却下されやすいです。
こうしたことから、初校であれば出したであろう指摘でも、再校以降のタイミングではあえて出さないという判断(流すスキル)も必要です。
Webと紙媒体とでは、公開と納品のスピード感が圧倒的に違います。この速さは、紙媒体専門の校正者がWeb校正をする際に戸惑うところでもあります。
おわりに
以上、Web校正のチェックポイントを解説してきました。この基本的なチェックポイントに自分独自のポイントを加えてブラッシュアップして行ってください。
冒頭でも述べましたが、チェック項目はそれぞれを順にやっていくことです。決して一度に同時にやろうとしないことです。これが一番のポイントといってもいいぐらい重要なことです。全部を一度にやろうとすると必ず何かを見逃がしてしまいます。
チェックポイントの一つ一つの項目に集中することで、校正作業時に思考が散漫になることもありません。それにより抜け漏れを防ぐことができます。
もし今まで漠然と校正していたという方がいたら、是非参考にしてみてください。きっと大きな効果を得られるはずです。