![校正のデジタル化は、ソフトでここまで出来る[事例紹介]](https://kousei.club/wp-content/uploads/2020/06/shutterstock_1708129294.jpg)
身近なソフトで、簡単自動化
エクセルのマクロを使って、文字の体裁の修正を一瞬でやります。
マクロと聞いて拒否反応を示す方もいるかもしれませんが、ビックリするぐらい単純なものです。
体裁瞬殺のGIF動画
▼ 画面が点滅した一瞬で、マクロで文字の体裁を修正しています。
一瞬なので、何がどうなっているのかわからないと思いますので説明していきたいと思います。説明を読んでから、改めてこのGIFを見てもらえればより理解できるかと思います。
GIF動画の説明
・GIF動画の修正前と修正後の状態です。
▼ 修正前
▼ 修正後
■ このマクロが処理している作業は、主に5つあります。
(1)「全角英字」を「半角英字」に変換
▼ 修正前
ABCDEFGHIJKLMNOPQRSTUVWXYZ
▼ 修正後
ABCDEFGHIJKLMNOPQRSTUVWXYZ
(2)「全角数字」を「半角数字」に変換
▼ 修正前
123456789
▼ 修正後
123456789
(3)「半角カタカナ」を「全角カタカナ」に変換
▼ 修正前
アイウエオカキクケコサシスセソタチツテトナニヌネノハヒフヘホマミムメモヤユヨラリルレロワヲンカャュョッィェォ
▼ 修正後
アイウエオカキクケコサシスセソタチツテトナニヌネノハヒフヘホマミムメモヤユヨラリルレロワヲンャュョッィェォ
※エクセルで扱う情報はデータベースから抜き出したものも多く、システムの都合で半角カタカナが使用されていることがあるため、この設定をしています。半角カタカナは、エクセル特有かもしれません。
(4)「半角パーレン」を「全角パーレン」に変換
▼ 修正前
(((((
)))))
▼ 修正後
(((((
)))))
※括弧などの人の目では見分けづらいものでも、すべて機械的に処理するので見落としもありません。
(5)「改行有り」を「改行無し」に変換
▼ 修正前
------------------------
この文は、改行
されています。
------------------------
▼ 修正後
--------------------------------------
この文は、改行されていません。
--------------------------------------
※改行指示が入ったままだと、DTP側でテキストを流し込んだ際に改行された状態のままになってしまうので、改行を取り除く設定をしています。校正では、特に関係ないかもしれません。
以上の(1)~(5)までの修正を、GIF動画の一瞬で行なっています。何千文字あろうとも数秒です。ソフトでやるので、人と違い疲労による集中力の低下もありません。
この5つの項目以外にも増やすこともできますし、減らすこともできます。
また、表記の間違いも置き換え可能です。
ひそかに(5)では文字も修正しています(動画でご確認ください)。
--------------------------------------
この文は、改行
されています。
↓
この文は、改行されていません。
--------------------------------------
あらかじめ決められている表記などは、事前に設定しておくと便利です。
文章中の体裁を修正する
上で紹介したマクロを使って、文章中の体裁を直してみます。
※ここでは、改行は残したままにします。
■ 赤文字の部分を、青文字の体裁に修正します。
・修正前
・修正後
▼ 修正のGIF動画
・画面が一瞬点滅したときに、マクロで修正しています。
【使用している文章はWikipedia:谷崎潤一郎より抜粋】
他の事例と自動化の効果
マクロは、単純に文字を置き換えるということだけではなく、決まりきった作業ならほとんどを自動化することができます。ルーティン作業は、ほぼ自動化できると考えた方がいいです。
次のようなエクセル上での作業も一括で変更が可能です。
―――――――――――――――――――
01 列の移動・削除
02 列の追加
03 関数の挿入
04 文字色の変更
05 書体の変更
06 級数の変更
07 罫線をつける
08 行の高さを変更
09 各セル内を縮小して全体表示
――――――――――――――――――
この一連の作業は、支給されたエクセル原稿を校正者が見やすいようにするため、列の入れ替え・級数・書体などを変えています。また、校正で確認しなくてよい項目を削除していたりもします。
修正対象のエクセル原稿は、下のようなものです(一部のみ表示)。
行が1000~1200、列が50ぐらいあるものです。情報量もぎっちり詰まっていて、手作業でやるのもうんざりするぐらいのものです。
※画像は粗くしています。
上記の一連の作業を一つ一つ手作業でやっていくと45分~60分ぐらいかかりますが、マクロだと5秒ぐらいで終わります。(※このマクロは、諸事情でお見せできません。すみません…)
マクロでやるので、誤って何かを消してしまうというケアレスミスもありません。作業内容を知っていなくても、誰でも簡単にできます。
また、修正だけでなくプリントアウトまでマクロで設定できるので、ボタンを押せば、後はプリンターの前で待っているだけで、修正されたものが出力されてくるということも可能です。
少し話は逸れますが、校正者が見る原稿をちょっと工夫するだけでも、校正のやりやすさはグッと変わってきます。たとえば、紙のサイズをA3かA4で出力するのか、書体をゴシック系か明朝系にするのかだけでも全然違ってきます。
上のマクロで作った原稿で、どれくらいの効果があったかというと、当初は5人かかっていた校正作業が、単純に原稿を見やすくするだけで、3~4人で終えることが可能になりました。
校正は、まだまだアナログな部分が多いので、改善できるところもたくさんあります。ひと手間掛けるだけで、全体の効率化に繋がることは多いです。
マクロのコード説明
冒頭の体裁を修正するマクロは、非常に簡単なコードで成り立っています。
▼ 実際のコード
マクロのコードだけみたら「???」ってなる方も多いかもしれません。
自分も同じです。ピンポイントで理解しているだけです。
意味を説明すると、
全角の「a」を検索して、半角の「a」に置換するということです。
同じく「b」を「b」に、「c」 を「c」に……、
といった具合に、単純な検索と置換の繰り返しです。
上の赤丸部分が違うだけで、その他は同じです。
すごく単純なものです。単純だから、追加も削除もすごく簡単なわけです。
※Windows用です。
もし、Office系のソフトで、ルーティンな作業を手作業で行なっているようでしたら、早めにやり方を見直した方がいいでしょう。
ここで紹介したマクロも、周りにエクセルに詳しい方がいるなら数時間もあれば作ってもらえるレベルのものです。
※周りに詳しい人がいなくて、どうしてもこのマクロを使いたいという方はお問い合わせからご相談ください。
校正のデジタル化への突破口
校正のデジタル化への取り組みで悩んでいるとしたら、少し見るポイントを変えた方がいいかもしれません。
校正作業をデジタル化するというよりも、校正作業の前段階で間違いを潰しておくということです。この視点で取り組んだ方が、デジタル化は上手くいきます。
事前に間違いを潰しておくことで、結果的に校正者がその間違いを見つける必要がなくなるので、校正の作業を置き換えたと言えるかもしれませんが…。
精度の不安定なフリーソフトに頼るより、身近にあるソフトでもできることはたくさんあります。たとえ部分的なデジタル化でも、積み重ねれば効果は絶大です。
次回は、ワード編を紹介したいと思います。