校正・校閲で使用するベタの意味
ベタは、校正だけでなく様々な場面で使用される言葉です。ここでは、校正で使う「ベタ」について詳しく紹介していきたいと思います。
■ 一般的に使用されるベタの意味
1. すきまのないさま。一面に広がっているさま。
2. 名詞またはそれに準ずる語の上に付いて、
「すきまのないさま」「すっかり」「すべて」などの意を表す。
3. 表現がありきたりで陳腐なさまを俗にいう。
【出典:三省堂 大辞林 第三版】
■ 校正で使うベタの意味
『ベタとは、校正の用語で、字送りと文字の級数を同じ状態にするという指示のことである。ベタは、字間が広がっていたり、狭くなっていたりして文章が読みづらい場合に指示することが多い。』
【出典:IT用語辞典バイナリ】
・字送りと文字の級数を同じ状態にするとは?
たとえば、字送り8歯(H)なら、級数が8級(Q)ということです。
1. ベタ=ベタ組
ベタは、文字間が空いていない状態のこと、すなわち「ベタ組」のことをいいます。
1. ベタ組
・文字間に空きのない状態
※この状態を「ベタ」もしくは「ベタ組」といいます。
2. 文字間に空きがある状態
3. 文字間が詰まった状態
※この状態を「詰め組」といいます。
▼ 3つを比べると次のようになります。
1. ベタ組
2. 空き有
3. 詰め組
2. ベタの校正記号の使い方
※文章中の校正記号は『JIS Z 8208:2007(印刷校正記号)』を参考にしています。
校正指示として使用する「ベタ」は、空いている文字間をベタ組にするときに使います。
▼ ベタの使用例
・例1
・例2
※何文字分あいていても、ベタの指示は使えます。
使用例の1と2は、「ベタ」の文字が省略可能です。記号(Λ)だけでも大丈夫ですが、「ベタ」の文字も付け加えておくほうが、指示が伝わりやすく親切です。
※ここでの「ベタ」の働きは、「ツメ」と同じです。
・例3
使用例1の応用です。
文字数が多い場合は、ツメル記号を複数入れるよりも、この指示のほうがわかりやすいです。
一方、文字間が詰まった状態(詰め組)をベタ組にする場合は、「ベタニモドス」の指示を使います。
▼ ベタニモドスの使用例
3. 行間に対してもベタを使う?
ベタは、文字間に対して使用するのが基本です。
行間に対して「ベタ」を使用することは、特殊な事情を除いてほぼありません。これは、行間をベタにすると、可読性が悪くなり文章が読みづらくなるからです。行間には、適度な空きが必要になってきます。
▼ 行間に空きがある状態
▼ 行間に空きがない(ベタ)の状態
おわりに
ここでは、校正記号表に従い「ベタ」や「ベタニモドス」の指示を使いましたが、実際には「ベタ」の代わりに「ツメ」の指示を使用しても通じます。
また、「ベタニモドス」も、「ベタ」や「字間正シク」などで代用できることも多いです。
出版・印刷業界で使われる「ベタ」の語には、次のような意味もあります。
・印刷用の絵や漫画などで、単色(主に黒色)で塗りつぶすこと
・網点(あみてん)印刷で、網点面積が100パーセントの状態
【出典:小学館 デジタル大辞泉】
そのため制作環境によっては、他の意味に誤解されるおそれもあります。そのような場合は、「ベタ」ではなく、「ツメ」や「字間正シク」の指示を使用するのが適切です。