校正者の未来は明るい?仕事の拡がりに向けた取り組み

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校正者の未来は明るい? 仕事の拡がりに向けた取り組み

校正の仕事は、発注者からの依頼があって初めて仕事が発生するものです。校正の仕事があって、そこから何かが生み出されるということはありません。この状態は昔から今もずっと変わりありません。

このような発注者から注文を受けて生産する業種は、身近なところで言うと製造業や建設業などに多く、一般に受注産業と呼ばれています。

端的に言うと
「これ作ってくれますか?」
「はい。わかりました」という関係の仕事です。

受注産業では、生産者の状況次第で依頼先が変更されることも少なくありません。そのため継続的に仕事の受注が続くという保証はなく、将来的な計画が立てづらくなります。このようなことは、校正の仕事においても同様です。

また一方で、校正の仕事はその価値を数値で測りづらい側面があります。そのため合理化の対象になりやすく人員削減のメスが入りやすい状況にあります。大きなクレームが発生して、その実損額を知りやっと存在が評価されることも多いですが、平時において校正の価値は気づかれにくいものです。

こういった状況では、仕事の計画性が立てづらいだけでなく、仕事がいつなくなるかわからないという不安がつきまといます。

ですが、ただ不安な状況に耐えるだけでなく、様々な業種を参考に仕事の流れを理解すれば、校正者の仕事の拡がりも見えてきます。

<受注産業とは?>
生産者(メーカー)が需要先から注文を受けて初めて生産を始める,造船,建設,産業機械などの産業をいう。見込み生産を前提とする市況産業などに対する用語。受注産業では,注文主の要求する仕様の個別性が強いため,標準品を見込み生産しても売れない。
【出典:コトバンク_世界大百科事典 第二版】

1. 製造業と校正の仕事の親和性

一般に校正者は出版・広告、印刷業界で活躍していることが多いため、校正の仕事はクリエイティブ系に属されます。しかし、校正の役割や仕事内容、仕事の流れからするとクリエイティブ系よりも製造業に近い位置にあることがわかります。

そのため製造業で浸透している「トヨタ生産方式」のマインドや手法は、校正者や校正の管理にフィットする部分が多くあります。

以下、校正と親和性のある製造業を通して、校正者の将来の取り組みを考えていきたいと思います。

2. 製造業から見る校正者の将来の取り組み

受注産業に属する製造業では、仕事の流れが数十年前と比べ変化してきています。もちろん、すべてではありませんが、業務範囲を拡げたり業態を変えたりしている企業は多くあり、中には事業の縮小や廃業といった道をたどった企業も存在します。

存続のカギとなる施策の一つとして、仕事を「待つ」状態から「取りに行く」状態へのシフトがあげられます。取りに行くと言っても、営業をかけまくり仕事を受注するのではなく、発注者の懐に入り込むことによって仕事の流れを自分の方向へ導くといったやり方です。

具体的には次のような流れです。

受注産業では、発注元であるメーカーが企画・開発を行い、その指示に従って製造するというのがオーソドックスな仕事の流れです。

 校正者の将来

ただ、この関係はよほどの太いパイプがない限り危ういものです。様々な外的要因により受注が途絶えることが考えられます。製造先を国内他社に乗り換えられたり、製造拠点を海外に移したりする可能性もあります。

校正者の将来

この矢印の方向を常に自社に向けていく戦略としては、「独自の技術力を高める」「価格競争力を付ける」など、他社と比べて優位性を示さないといけません。それによりメーカーとの繋がりが強固となり、次の発注へと繋がっていきます。

また他の戦略として、今の仕事に新たな付加価値をプラスし、仕事を取り込んでいくという方法もあります。これは製造の前段階の工程に入り込んでいくという方法で、メーカーが必要としているものを自分達が先回りして企画・開発していくということです。

企画・開発力を身に付け、それを軸に仕事の流れを強固なものにしていきます。有名なところで言うと社員の平均年収の高いことで知られる企業、キーエンスでも顧客の要望の先をいく提案型の営業に注力されています。

取り組み事例

[1]これまでメーカー側が行っていた企画・開発力を、自社にも新たに加えます。

 校正者の将来

[2]1の企画・開発力をもって提案をしていきます。

 校正者の将来

[3]それにより従来メーカーが行なってきた企画・開発の領域に食い込んでいくことができます。

 校正者の将来

[4]企画・開発が一つの工程となり、メーカーからの仕事の流れが強固なものとなります。

 校正者の将来

企画・開発力を身に付けてメーカーの懐に飛び込むと、メーカー側を含めた一工程としてのフローができあがります。「企画・開発」で、「メーカー」と「製造業」の繋がりを強固にし、切っても切れない関係を作り上げていくわけです。

ここに至ると、仕事を「待つ」という状況から抜け出せます。理想のように思えますが、数十年前から価格競争力で苦しめられてきた製造業の中には、このような流れで成功している企業もあります。

たとえば、ある金型製作の現場では、それまでメーカーからの完全受注の状況でした(※金型とは、樹脂を流し込んで成形品をつくるための型です)。メーカーからの指示があって仕事が発生していたので、生産計画が立てられない、確かな技術力はあるが仕事が先細りするかもといった不安な状況にいつも置かれていました。

そこで、自分達で企画・開発・デザイン力まで身に付けて、メーカー側へ提案できる体制を築くことにシフトしていきます。自分達でできないことは、技術力を持ったパートナーと手を組んだり必要な人材を採用したり理想の体制を構築していきます。

そうしたことによって、メーカーからの「こういう製品を作りたいから、こういう金型を作ってください」という受け手の立場から、逆に「こういう製品はどうですか?」と提案できる立場に逆転したわけです。製品を作るという提案によって、その製品を製作するのに必要な金型製作の仕事も自動的に受注できるわけです。

このような流れは、大なり小なりの違いはあれど、どこの企業でも行なっていることです。

3. 校正者の将来に向けての取り組み

前述の製造業の取り組みを2点に絞って、校正者の今後の取り組みについて考えてみたいと思います。

1. モノづくりを極めて、自社独自の技術力を高める
2. 前工程に入り込み仕事の流れを強固にする

この2点の取り組みを校正者に落とし込んで考えてみます。

<1>を選択する場合、仕事を極めるのと同時に、それを発信できる能力を身に付ける必要があります。どんなにスキルが高くても、自分のスキルの優位性を周りに知ってもらわないと仕事の依頼は来ません。また、今後AIの浸透により、校正者の仕事は減っていく可能性が非常に高いです(校正の仕事自体がなくなることは考えにくいですが)。

校正の仕事が減っていく理由は、AIやデジタルツールが校正者に置き換わるということではなく、AIやデジタルツールによって校正作業の前段階でのミスが少なくなるからです。

ライティングやDTPの段階で、誤字脱字や誤変換という単純な間違い、表記揺れなどをAIやデジタルツールで潰すことができるため、自ずと校正者が見つけるミスも少なくなっていくということです。

校正の需要が高い時代ならの選択は得策ですが、少なくなるという展望の中では、いい選択肢とは言えません。

<2>を選択する場合、校正者として何ができるか?
前工程への対応力(スキル)が問われてきます。校正の前工程はある程度絞られてくるので、それらに応じたプラスαの能力を身に付けておく施策が考えられます。

校正者の前工程といえば、以下のようなものがあげられます。

・編集
・進行管理
・原稿作成/原稿整理
・ライティング
・データ整理
・テキスト入力
・DTP
・Web   etc.

会社によっては、画像管理や文書の整理、商品情報の確認など、校正者としての特性を活かせる領域があると思います。決して何でも屋になるということではなく、望ましいのは校正者としての適性を発揮できる領域を見つけることです。

これらの業務をメイン業務としなくても、サポートとしてでも対応できるスキルさえあれば仕事の幅を拡げる機会は生まれてきます。

実際の求人サイトを見てみても、校正職単体での募集よりも他の職種とセットで募集されることは多いです。たとえば『ライター+校正』『編集+校正』『進行管理+校正』などの組み合わせの求人はよく見られます。

参考までに、以下の出版・広告系に強いとされる人材紹介会社で、実際の求人情報をご覧になってみてください。

 > マイナビスタッフ
 > エキスパートスタッフ
 > マスメディアン

校正の仕事は、緻密で正確性を要し、集中力と忍耐力が常に必要とされます。これはどのような職種においても根幹となる部分です。そこからプラスαの能力を身に付けていくことで、仕事の幅を拡げていくことができます。

おわりに

校正の仕事の将来性を考えたとき、自身のいる業種の動向にフォーカスしがちですが、他業種から得られる情報もたくさんあります。

現状の仕事の幅を拡げるにも、将来に向けての備えをしておくにも、他業種の動向を参考にすれば役立つ情報を得られるかもしれません。是非参考にしてみてください。