「静める」と「鎮める」の意味の違いと使い分けのコツ

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「静める」と「鎮める」の意味の違いと使い分けのコツ

「静かにさせる」「落ち着かせる」といった意味の「しずめる」は、「静める」または「鎮める」と表記されます。この記事では、これらの漢字の意味の違いや使い分けについて解説します。

[記事作成にあたっては、以下の書籍・辞書・サイトを参考にしています]

『明鏡国語辞典 第二版』(大修館書店)
『記者ハンドブック 第14版』(共同通信社)
『漢字の使い分けときあかし辞典』(円満字二郎、研究社)
『デジタル大辞泉』(小学館)

1. 根本的な意味の違いと漢字の由来

二つの漢字の根本的な違いについて、『漢字の使い分けときあかし辞典』(円満字二郎、研究社)では、次のように解説されています。

一般的には「静める」を使い、「はたらきかけて落ち着かせる」場合は「鎮める」を使うことで意味が明確になるとされています。

理屈としては、「かねへん」の漢字である「鎮」はもともと「金属製のおもし」を指し、「“上から押さえて安定させる”ところから、“強くはたらきかけて落ち着かせる”という意味で使われる」ということです。

2. 判断の目安:自然な「静」と抑えつける「鎮」

『記者ハンドブック 第14版』(共同通信社)でも次のように説明されています。

・「静める」=動の対語、静かになる
・「鎮める」=おさえつける、おさまる

自然に静かになる場合は「静める」、何かの作用によって静かになる・静かにさせる場合は「鎮める」と考えると判断しやすいです。

たとえば「暴動をしずめる」「反乱をしずめる」のような場合、政府や警察などが「はたらきかけて」静かにさせると考えることができます。これらの表現は「鎮圧する」と言い換えられることからも、「鎮める」のほうがしっくり来るでしょう。

3. 例外:神や霊魂に関する表現

例外的に注意が必要なのが、「御霊をしずめる」のような神や霊魂などに関する表現です。こうした表現については「静める」ではなく「鎮める」を使うとされています。「鎮座」「鎮魂」などの熟語と関連づけて覚えておくとよいでしょう。

4. 明確に区別できないケースと辞書の揺れ

ただし、これらの表記は完全に区別できるものではありません。「鎮静」という熟語があることからもイメージできるように、意味が重なる部分もあります。

『明鏡国語辞典』(大修館書店)は、上で用例として挙げた「暴動をしずめる」「反乱をしずめる」について、「静」と「鎮」のいずれも使用可能としています。『漢字の使い分けときあかし辞典』でも、「暴動を鎮める」とすると「“はたらきかけ”の結果であることがはっきりする」効果があるものの、「暴動を静める」と書いても誤りではないとされています。

また、「心をしずめる」「怒りをしずめる」のように「気持ちを落ち着かせる」という意味の場合も、辞書によって以下のように判断が揺れています。

・『記者ハンドブック』→「静」
・『明鏡国語辞典』   →「静」「鎮」のいずれも可
・『デジタル大辞泉』  → どちらかというと「鎮」

おわりに

以上、「静める」と「鎮める」の違いを説明してきましたが、これらの使い分けは絶対的なルールではなく、ニュアンスをよりよく表現するためのひとつの指針と考えるのがよいです。