校正・校閲でスピードがない/校正の時間がかかるという人の悩みを考えてみました

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校正・校閲でスピードがない/校正の時間がかかるという人の悩みを考えてみました

どんな仕事でもどこかで壁にぶつかるということはあります。
校正をしていて、「自分にはスピードがない」「時間がかかってしまう」と悩んでいる人のために解決方法を考えてみました。

明確な答えではありませんが、こうではないかという実体験から想像してみたのでどれかに当てはまるようでしたら参考にしてみてください。


経験とともにスピードはあがる?

まず、校正するスピードは、経験とともに比例していくというわけではありません。

  校正のスピードと時間の解説  

基本的には、次のようなイメージです。

  校正のスピードと時間の解説

次のようなパターンも多いです。

  校正のスピードと時間の解説

最初は順調にスピードが上がり、経験や学習とともに見る項目や予測できる間違いが増えていき、スピードが落ちる(時間がかかる)というパターンです。

基本的にどこかで下げ止まります。経験とともに、校正するポイントがわかってきて、どこを重点的に見ればいいのか力の入れ具合がわかってくるからです。

1. 校正・校閲のスピードの基準

「どうしたら速くなれますか?」という質問はよくされます。

そもそも適正な速さというものがないので何とも言えないところですが、自分の校正のスピードが遅い速いは誰もが気にするものだと思います。

フリーランスや在宅など一人で校正をする環境の場合、自分はスピードがない、その根拠が金額に見合っていないというのなら、その根拠自体が間違っている可能性があります。

ページ単価(や時給)に対して割りに合う/割りに合わないは、校正のスピードが遅い速いの基準にはなりません。単純に、支払われる金額が低いということも考えられます。労働の対価として適正価格を貰えていないのかもしれません。

そのため、ここでは、相対的な基準を持った人向けの内容になります。
数人の校正者と仕事をしていて自分だけ遅いと感じる人、
つまり、他の校正者と比較して相対的に自分が遅いと実感している人です。

2. 時間感覚が乏しくて時間をかけてしまう

校正する前に『この分量だったら何分ぐらいで校正できる』というイメージを持っておく必要があります。校正にかかる時間を想定できていないと、やみくもに時間を食いつぶしていくことになります。

例えば、
『この原稿内容だと1ページ15分ぐらいでできる』といった感覚です。
校正の時間は原稿内容によって変わってくるのは当然ですが、「やってみないとわかりません」というスタンスでは時間感覚はおそらくずっと身に付きません。

時間を基準にしておかないと、時間があるだけ使い続けることになります。学生症候群に近い考え方に陥ります。

時間を意識すると焦ってしまうかもしれませんが、時間感覚が抜けていることは仕事では致命的です。

自身の実体験では、研修を受けていたとき、校正にかかる時間を常にストップウォッチで測られていました。当時はプレッシャーでしたが、今ではその経験により時間感覚が身に付いたと思っています。急ぎの仕事など速さを求められる場面では、自分が校正するスピードを調整できるつもりです。

『これ以上のスピードでやったら頭が追い付いつてこないからダメだ』とか『このスピードまでなら大丈夫だな』という感覚です。

「急ぎで校正してください!」と言われた場合でも、間に合う/間に合わないのジャッジはすぐにできます。間に合う場合はすぐに取り掛かり、間に合わない場合は他の手段を考えます(コピーを取って誰かと手分けするとか)。

これは自分の能力でなく研修のおかげです。
誰でも時間を意識していれば身に付くものだと思っています。

3. 作業内容が曖昧で時間のムダに

・見すぎ(やりすぎ)→ 過剰品質
このパターンが一番多いかもしれません。
引き合わせだけの指示を受けたのに、良かれと思って素読みもしているなど。

・校正しなくてもいい箇所まで見ている
後でリライトされる文章を素読みしていたり、変更される部分を校正していたりなど。

・入れなくていい赤字入れや疑問出しをしている
全体指示で一括で入れる赤字や既に解決している疑問を入れるなど。

上記はすべて指示内容の聞き間違いや食い違いで起こるものです。

周りとのコミュニケーション不足から発生している可能性が高いです。これらは、校正を依頼する側、周りの校正者に確認すればすぐに解決できるものです。

校正は、一人で黙々と作業するものだと思っている方も多いですが、意外とコミュニケーション能力も大事になってきます。

4. 自分のスピードに自分で制限をかけている

自分が思っている以上に速く校正できるのに、自分の思い込みで制限をかけている可能性があります。

過度に慎重になりすぎることが原因かもしれませんが、自分の能力には適度な自信を持たなくてはいけません。

だからといって、いきなりスピードを上げるのはまずいので、他の作業で自分の速さを試してみることです。例えば、原稿を整理するとき、校正ゲラを並べるときなど気持ち早めに作業するようにし、この速さでも自分はできるという感覚を持つことが大切です。

5. 特殊な間違いをずっと気にしている

制作環境の変化・社内システムの変更の際に起こる特殊な間違いというものがあります。OSを更新したり、ソフトのバージョンアップしたときなどに見られる間違いです。

そういう過去に経験した間違いが、今も起こると思って時間をかけすぎているということです。過去の経験が邪魔をしてしまっているわけです。

特にWeb校正では、十数年前から何度も環境は変化してきています。これまで起こっていた間違いが、制作環境の変化により起こらなくなることはあります。校正も環境の変化に合わせて、見方を変えていかないといけません。

何か特殊な間違いに出くわしたら、まずは担当者やオペレータなどと共有しておくことです。その原因がわかれば、今後も気を付けるべきことなのか今だけのことなのかが判断できます。

要らぬ取り越し苦労は、時間を浪費するだけでなく精神的にも堪えます。

おわりに

校正に時間がかかっても「丁寧と言われる人」と「遅いと言われる人」は区別する必要があります。

かけた時間に品質がともなうのが「丁寧」
かけた時間に品質がともなわないのが「遅い」

前者であるなら、特に今のスピードを気にする必要はないと思います。

校正のスピードが遅いと感じている人も、ある程度経験を積むことで解決していくところがあります。今は視点が散漫になったり判断能力が乏しかったりで、時間がかかっているだけかもしれません。経験とともにそれらが解消されてくることも多いです。

まずは、時間を意識すること。次に、自分はどれぐらいまでのスピードなら校正できるのか適正スピードを知ることです。

それぞれが置かれている環境で解決方法が違うので明確な答えは出せませんが、時間だけは常に意識して仕事に取り組まないといけません。これは、どんな仕事にも当てはまることで大切なことです。