泣き別れの意味
泣き別れとは、 泣く泣く別れること、嘆き悲しみながら別れることをいいます。
次のように使用します。
- 父と子の泣き別れ
- 母と泣き別れする
- 彼と彼女は泣き別れた
「別」の漢字が使われていることから、使用する対象は「人」が相応しいですが、物事に対しても使用されます。
その場合の意味は次のようになります。
「本来一緒にしておくべきものが別れ別れになること」
有名なところでいうと『鬼滅の刃』 第83話「変貌」で、上半身と下半身が真っ二つになった主人公の妹に対して鬼が言っています。
『可哀想に。胴体が泣き別れになってるでしょ』
このように本来一つであるべきものがわかれてしまった場合に使われます。
他にも、医療や経理、プログラミングなどでも泣き別れの言葉が使われます。それぞれ使用される場面は違いますが、おおよその意味合いは同じです。
校正の用語として使用される場合、泣き別れは、一緒にしておくべきというよりも一緒にしておいたほうが望ましいというニュアンスが強いです。
「一つで扱ったほうが読みやすいもの/理解しやすいもの」という感じです。
1. 泣き別れの対象と具体例
▼ 泣き別れの対象
泣き別れを避けたいものとして、次のようなものがあげられます。
- 人名
- 企業名・役職名
- 商品名・作品名
- 数字
- 四文字熟語 など
以上の語が泣き別れてしまうと、
次のようなデメリットがあります。
- 読みづらい
- 意味を理解しづらい
- 縁起が悪い(人名・企業名) など
他にも、ルビ付きの文字や2倍角以上の三点リーダーも、体裁上の理由で泣き別れ不可となることがあります。
▼ 文章中で起こる泣き別れの例
以下は、 固有名詞や数字など単語の途中で区切られ、泣き別れとなった状態です。
■ 2行にわかれる
・作品名『キテレツ大百科』
・人名『木手英一』(※キテレツ大百科の主人公)
・数字『1974年』
■ 2ページにわかれる
・数字『1974年』
泣き別れは、文字だけとは限りません。
表とコピー、画像とイラストなど、ワンセットでの扱いが望ましいものが、別のページなどに離れ離れになるときにも「泣き別れる」といいます。
▼ 泣き別れが誤読を招く
□□□□□□□□□の作曲家である本田一
郎さんの公演があります。
この文では人名が泣き別れを起こしています。
そのため、一瞬『ほんだはじめ……』となり、読み進めて『あ、いちろうさんか』となるケースが考えれらます。このような読みづらさをなくす(誤読を防ぐ)ために泣き別れが回避されます。
特に人名は読み間違いがあっては失礼にあたるので慎重に対処しておく必要があります。
・泣き別れを回避させた文です。人名をはっきりと認識でき読みやすくなります。
□□□□□の作曲家である本田一郎さんの
公演があります。
2. 泣き別れの調整
泣き別れの対象として、前述した作品名や人名、数字など以外にも、企業名や団体名、役職名などもその対象になることが多くあります。
【例】
・株式会社○○○○○
・○○○○○工業組合
・○○○○○出版社
・□□本部部長○○○○
・品質管理課課長代理○○○○
・事務局長○○○○
ただ、企業名や作品名などは文字数が多く、一行で収めるのが難しいことも多いです。その場合は、次のようにあえて区切りのいいところでわけることがあります。
人名も、次のように苗字で区切れば見やすくなりますが……
人名は、企業名や作品名などとは違いある程度文字数が限られてきます。そのため、極力泣き別れしないように調整するのが望ましいです。
一行に収めておくと、読み手に人名であることが伝わりやすくなります。
3. 泣き別れの具体例(その他)
以下の例は、泣き別れというより単に区切りが悪いというレベルかもしれませんが、一つにしておくほうが読みやすいものです。
▼ 例1
・数値+単位で表わされるもの。この辺りは読みにくいと思う人もいれば、何とも思わないという人もいます。好みの問題になります。また、見栄えの問題で避けることもあります。
■ 修正後
▼ 例2
・一塊で扱ったほうが意味を理解しやすいもの。
■ 修正後
▼ 例3
・この例は特殊かもしれません。区切りが悪いというよりも、価格が記載されているため、読み手に「何がいくらなのか」を明確にするため一行にします。
■ 修正後
4. 泣き別れのほうがいい?
次のような金額が文中に出てきた場合、できれば一行に収めたいと思うかもしれません。
その場合、次の二つの処理が考えられます。
・2行目に追い出す
[A]
・1行目に追い込む
[B]
ただ、[A]の場合は文字間がアキすぎに見え、[B]の場合は文字間が詰まりすぎに見えます。
[A]
[B]
元の状態と調整後の[A]や[B]とを比べた結果、あえてそのままの状態にしていることもあります。
意図して修正しないことは少なくありません。
5. 泣き別れの注意点
泣き別れの状態は、読みやすさを損なうことがありますが、必ず修正するというものではありません。ルールがあるなら別ですが、望ましいというレベルです。
一つの泣き別れを調整したがゆえに、他の箇所に泣き別れが発生したり、文字間がおかしくなったりしてかえって読みづらくなることがあります。
また、泣き別れを指摘することは簡単ですが、調整するDTP側の負担が大きくなってきます。一つや二つなら問題ありませんが、訂正箇所が多くなると全体のバランスを見て調整することになります。かなりの労力となってきます。
必ずしも間違いとはいえない泣き別れに注力するあまり、他の大きなミスを誘発する可能性が考えられます。
そのため校正時には、泣き別れの確認をするしないの線引きや、対象をどこまでにするかの基準を持っておく必要があります。
おわりに
校正者なら泣き別れの知識を持っておいたほうがよいですが、実作業で確認すべきかどうかは環境によって違ってくるので何とも言えません。
仮に校正作業の範囲であっても、どこまで泣き別れを確認するかは大きくバラついてくるはずです。
人名と社名だけの確認でOKという場合もあれば、本文中はそのままで見出しなどの目立つ部分だけ泣き別れの確認をするといったようにです。
泣き別れの確認は、特定の固有名詞ならデータで検索したほうが圧倒的に早くて正確です。人の目で確認するなら、素読みと同時に見つけるというよりも、別作業として行末だけ一気に見て確認したほうが効果的です。
赤字を入れるときは、泣き別れている語2つを丸で囲んで引出し線を引き、「泣き別れ正ス」「一行に収める」などと指示すればわかりやすいです。
注意点としては、赤字を入れた影響で、付近に泣き別れが発生しそう語がないかも確認しておくことです。もしあるようなら、鉛筆で丸囲みし「ここ泣き別れないように」「これは一行のママで」などと補足指示をしておきます。
【記事内で使用した例文は、Wikipedia『コロ助』より使用いたしました】