校正の赤字はどこまで入れる?「修正・確認・提案・残す」の4つの判断基準を例文で解説

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校正の赤字はどこまで入れる?「修正・確認・提案・残す」の4つの判断基準を例文で解説

校正をしていると、文章の誤りには気づけても、赤字をどこまで入れるかで迷うことがあるかもしれません。なかでも迷いやすいのが、「直すか、残すか」の判断です。

・意味は通じるが、どこか引っかかる
・書き手の個性なのか、読みにくさなのか分からない
・直したいが、自分の好みの押し付けにならないか不安

こうしたときは、気になる箇所をすべて直そうとせずに、
「修正」「確認」「提案」「残す」の4つに分けて考えると整理しやすくなります。

判断の軸は「自分ならどう書くか」ではなく、次の3つです。

1. 何を根拠に直すのか
2. 直しても意味や意図が変わらないか
3. 今回の作業範囲に含まれるか

「大前提」:赤字を入れる前に、作業範囲とルールを確かめる

一般に、校正の主な作業は、仕上がった文章を元の原稿と見比べて違いがないかを確かめることや、誤字脱字・表記の誤りを見つけることです。内容のつじつまが合っているか、事実が正しいかを調べるのは校閲、表現をよりよくするのは編集者やライターの仕事とされます。ただし実際の現場では、これらをまとめて「校正」と呼ぶことがあるため、どこまでを任されるかは案件ごとに違います。

今回の作業範囲はどこまでか、その文章ではどんなルール(表記の決まりなど)に従うのかを、あらかじめ確かめておくことが大前提です。

以下、校正時の4つの対応「修正」「確認」「提案」「残す」を順に紹介します。

①「修正」:誤りと正しい形が分かる箇所は直す

【修正】の判断基準と例文

誤字脱字、助詞の重複、表記ルールから外れた書き方など、根拠を示せて、正しい形も分かる箇所は直します。

ただし、誤りに気づけても、正しい形まで分かるとは限りません。たとえば、人名の漢字が違うと気づいても、正しい漢字が分からなければ直せません。そうしたときは、推測で直さずに、②の「確認」に回して書き手に確かめるようにします。

● 迷ったときは、「どこが誤りで、なぜその形に直す必要があるのか」を説明できるかどうかを考えます。

①-1「修正」例1:一般語の書き間違い

<原文>
導入前にシュミレーションを行います。

<修正例>
導入前にシミュレーションを行います。

■ 理由
普通の言葉として使う場合、標準的な表記は「シミュレーション」です。普通の言葉として使われているのであれば、書き間違いとして直します。

ただし、作品名や商品名、発言の引用などでは、元の表記を尊重する必要がある場合もあります。そうした可能性があるときは、機械的に置き換えずに確かめます。

①-2「修正」例2:助詞が重複している

<原文>
申込書をを窓口に提出してください。

<修正例>
申込書を窓口に提出してください。

■ 理由
助詞の「を」が重複しています。一つ削除すれば、意味を変えずに正しい形に直せます。

このように、誤りと修正後の形が明確な箇所は、書き手の意図を推測する必要がありません。重複している部分だけを直し、ほかの表現には手を加えません。

①-3「修正」例3:指定された表記ルールに合っていない

<原文>
詳細は、お問合せフォームからご連絡ください。

※適用する表記ルール:この媒体では「お問い合わせ」に統一する。

<修正例>
詳細は、お問い合わせフォームからご連絡ください。

■ 理由
「お問合せ」も一般に使われる表記ですが、今回のルールからは外れているため直します。

ただし、「お問合せフォーム」が画面上の正式な名称である場合は、扱いが変わることがあります。表記ルールに合わせて統一するか、画面の表示どおりにするかを、ルールや担当者に確かめます。

②「確認」:意味や事実を確定できない箇所は、書き手に確かめる

【確認】の判断基準と例文

複数の意味に取れる表現や、数値どうしが合わない箇所は、校正者だけで直し方を決めないほうが安全です。疑問点をコメントで示して、書き手や担当者に確認します。実際の現場では、これを「疑問出し」と呼ぶこともあります。

● 迷ったときは、今ある情報だけで、書き手の意図や正しい内容を確定できるかどうかを考えます。

②-1「確認」例1:合計の人数が合わない

<原文>
当日の参加者は、大人12人、子供15人の計25人でした。

<確認内容>
大人12人と子供15人を足すと27人になり、合計の25人と一致しません。大人と子供それぞれの人数と合計を確認する必要があります。

■ 確認結果に応じた修正例
・合計の25人が正しい場合
⇒大人と子供の正しい人数を確認したうえで、「大人○人、子供○人の計25人」のように内訳を直します。
・内訳(大人12人と子供15人)が正しい場合
⇒「計25人」を「計27人」に直します。

計算すれば食い違いには気づけますが、どの数値が誤っているかは原文だけでは分かりません。合計を機械的に27人へ直すのではなく、集計の根拠となる資料などで確認します。

②-2「確認」例2:「と」でつないだ範囲が分からない

<原文>
山田さんと佐藤さんの担当者に連絡しました。

<確認内容>
連絡した相手が、
「山田さん本人と、佐藤さんの担当者」なのか、
「山田さんの担当者と、佐藤さんの担当者」なのか、
「山田さんと佐藤さんの両方を受け持つ一人の担当者」なのか、
この文面からは判断できません。3つの可能性を確認する必要があります。

■ 確認結果に応じた修正例
(1)山田さん本人に連絡した場合
⇒山田さん本人に加え、佐藤さんの担当者にも連絡しました。
(2)二人それぞれの担当者に連絡した場合
⇒山田さんの担当者と、佐藤さんの担当者に連絡しました。
(3)二人を同じ担当者が受け持っている場合
⇒山田さんと佐藤さんの両方を受け持つ担当者に連絡しました。

山田さん本人に連絡したのか、山田さんの担当者に連絡したのかによって、文の意味が変わります。担当者に連絡した場合も、二人にそれぞれ担当者がいるのか、一人で二人を受け持っているのかによって、連絡した人数が変わります。前後の文や関連資料で判断できなければ、書き手に確認します。

②-3「確認」例3:指示語が何を指すか分からない

<原文>
申込書と本人確認書類を郵送してください。こちらはコピーでも構いません。

<確認内容>
「こちら」が「申込書」と「本人確認書類」のどちらを指すのか、両方ともコピーでよいという意味なのかが、文面からは判断できません。対象の書類を確認する必要があります。

■ 確認結果に応じた修正例
(1)本人確認書類を指す場合
⇒申込書と本人確認書類を郵送してください。本人確認書類はコピーでも構いません。
(2)申込書を指す場合
⇒申込書と本人確認書類を郵送してください。申込書はコピーでも構いません。
(3)両方を指す場合
⇒申込書と本人確認書類を郵送してください。申込書と本人確認書類は、コピーでも構いません。

直前に二つの書類があげられているため、「こちら」だけでは対象を特定できません。提出条件に関わる箇所なので、推測で書類名に置き換えず、正しい条件を確認します。

疑問出しの書き方

■ 疑問出しの書き方

「これでOKですか?」「要確認」「ここ、確認してください」と伝えるだけでは、書き手も何を答えればよいか分かりません。コメントには、次の3点を入れると伝わりやすくなります。

1. 問題の箇所
2. 考えられる解釈や、合わない点
3. 内容を確定するのに必要な情報(どちらの意味か、どの数値が正しいかなど)

できれば、指摘と合わせて修正案も添えると親切です。確認した結果や文の読み取り方によって直し方が変わる場合は、それぞれに合った案を用意しておくと、書き手が判断しやすくなります。

言い換えの候補をあげるときも、ただ並べるだけでなく、それぞれの表現でどんな意味や印象になるのかを書き添えておきます。そうすれば、書き手が選ぶときの手がかりになります。

③「提案」:誤りではないが改善できる箇所は、理由と代案を添える

【提案】の判断基準と例文

②の「確認」は、正しい内容や書き手の意図を確かめないと、直し方が決まらない箇所です。一方、③の「提案」で扱うのは、意味が明確で、そのままでも誤りではない箇所です。直すかどうかは、書き手が選べます。

誤りではなくても、文が長い、情報の順序が分かりにくい、同じ表現が重なるなどの点で、読みやすくできる場合があります。

ただし、表現をよくする方法は一つではありません。誤りの修正とは分けて、何が読みにくいのか、どう変えるとよいのかを示して提案します。

● 迷ったときは、想定する読者や文章の目的に照らして、直すことでどんなよさがあるのかを説明できるかどうかを考えます。

③-1「提案」例1:同じ文末が続く

<原文>
当日は晴天に恵まれました。多くの参加者が会場に集まりました。イベントは大盛況となりました。

<改善できる点>
「〜ました」が3文続いていて、単調に感じられる場合があります。最初の2文をまとめ、最後の文末も変えると、文章のリズムに変化を付けられます。

■ 修正例
当日は晴天に恵まれ、多くの参加者が会場に集まりました。イベントは大盛況でした。

同じ文末が続くこと自体は誤りではありません。短い文で一つずつ伝えるほうが読みやすい場合もあるので、文末の重複だけを理由に提案するのではなく、文章全体の調子を見て、提案するかどうかを決めます。

③-2「提案」例2:言い回しを簡潔にできる

<原文>
この機能を利用することによって、入力にかかる時間を短縮することができます。

<改善できる点>
「利用することによって」「短縮することができます」は、より短く表現できます。操作案内など、内容を手早く伝えたい文章では、簡潔な形のほうが読みやすくなります。

■ 修正例
この機能を利用すると、入力にかかる時間を短縮できます。

「短縮することができます」を「短縮できます」とすれば、「できる」の意味も残せます。一方、「短縮します」とすると、「できる」の意味がなくなり、必ず短縮されるかのような言い方になります。そのため、単に文字数を減らすのではなく、原文の意味を保てる形を選びます。

③-3「提案」例3:一文に複数の手順が詰め込まれている

<原文>
申込書をダウンロードして必要事項を記入し、記入内容に誤りがないことを確認してから、指定の宛先に郵送してください。

<改善できる点>
一文の中に「ダウンロード」「記入」「確認」「郵送」という4つの手順が入っています。文を分けると、手順の区切りが伝わりやすくなります。

■ 修正例
申込書をダウンロードし、必要事項を記入してください。記入内容に誤りがないことを確認してから、指定の宛先に郵送してください。

原文でも手順の順序は明確で、文法上の誤りもありません。読みやすさを高めるための提案として扱い、文を分けても作業の順序や条件が変わらないようにします。

④「残す」:誤りでない表現や、意図のある文体はそのまま生かす

【残す】の判断基準と例文

「なんとなく変」「自分ならこう書く」という感覚だけでは、直す理由になりません。

書き手の語り口、登場人物の個性、慎重な言い回しなどは、文章の意味を支える要素です。整えすぎると、かえって書き手の意図が伝わりにくくなることがあります。

● 迷ったときは、一度立ち止まって、本当に直す必要があるのか、それとも自分の好みにすぎないのかを考えます。

④-1「残す」例1:会話文のら抜き言葉

<原文>
「こんなにたくさん、一人じゃ食べれないよ」と、妹は笑った。

■ 判断:残す
「食べれない」は、標準的な書き言葉の「食べられない」から「ら」が抜けた、いわゆる「ら抜き言葉」です。地の文(せりふ以外の部分)であれば、表記の決まりに沿って「食べられない」に直すことを考えます。

ただし、この文は登場人物のせりふです。くだけた話し方を表すために使われているのであれば、一律に「食べられない」へ直す必要はありません。ほかのせりふや人物設定にも合っていれば、語り口として残します。

なお、媒体によっては、会話文でもら抜き言葉を使わない決まりがあります。その場合は、ルールに従うか、書き手に確認します。

④-2「残す」例2:言葉のニュアンスの違い

<原文>
彼の趣味は、毎朝のジョギングです。

■ 判断:残す
「趣味」は楽しみとして行うこと、「日課」は毎日決まって行うことを表す言葉です。毎朝続けているからといって、それが趣味ではなくなるわけではありません。「彼の日課は、毎朝のジョギングです」と直すと、楽しみとして行っていることよりも、毎日の習慣であることに焦点が移ります。

原文は自然に意味が通り、「趣味」と「毎朝」の間にも矛盾はありません。「毎朝なら日課のほうが適切」という理由だけでは置き換えず、そのまま残します。

④-3「残す」例3:習慣として定着した敬語

<原文>
明日の午後3時に、御社へお伺いします。

■ 判断:残す
「伺う」はそれだけで謙譲語です。そこに「お〜する」の形を重ねた「お伺いする」は、二重敬語ではないかと気になるかもしれません。

ただし、文化庁の「敬語の指針」では、「お伺いする」は習慣として定着している二重敬語の例としてあげられています。ビジネスの場面でも広く使われているため、誤りとして直す必要はありません。

>参照PDF『敬語の指針』(文化審議会答申)
https://www.bunka.go.jp/seisaku/bunkashingikai/kokugo/hokoku/pdf/keigo_tosin.pdf

「明日の午後3時に、御社へ伺います。」と直しても間違いではありません。それでも、原文が誤りでない以上、「二重敬語だから」という理由だけでは書き換えずに残します。

なお、二重敬語がすべて認められているわけではありません。たとえば「おっしゃられる」は、一般に適切ではないとされています。こうした表現には、③の「提案」として修正案を示します。また、媒体の表記ルールで「伺います」にそろえると決まっている場合は、ルールに従います。

おわりに

校正で迷いやすいのは、誤りを見つける場面よりも、「どこまで手を入れるか」を決める場面です。気になる表現は、次の4つに分けると判断しやすくなります。

「修正」→ 誤りと正しい形が分かり、根拠を示せる
「確認」→ 今ある情報だけでは、意味や事実を確定できない
「提案」→ 意味が明確で誤りでもないが、読みやすくできる
「残す」→ 誤りではなく、書き手の意図や文体として成り立っている

「確認」と「提案」で迷ったときは、次のように考えると見分けやすくなります。
正しい内容や意図を確かめないと直し方が決まらないなら「確認」、
意味を変えずに改善案を示せて、採用するかどうかを書き手が選べるなら「提案」です。

どの基準を選ぶ場合も、まずは作業範囲と、その文章で使うルールを確かめておくことが前提です。

文章を確認していて違和感を覚えたら、まずはそれが誤りなのか、確認すべき点なのか、よりよくできる点なのか、好みの違いなのかを見極めるところから始めます。その積み重ねが、書き手の意図を守りながら、読み手に正確に伝わる文章につながっていきます。