「上澄み」「中澄み」「下澄み」を3つのコンボで使うことはある?

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「上澄み」「中澄み」「下澄み」を3つのコンボで使うことはある?

「上澄み」という言葉があるなら、「中澄み」や「下澄み」もあるのでは? 上・中・下とそろえたくなる気持ちが、なんとなくあると思います。

結論から言うと、一般的な言葉として定着しているのは「上澄み」だけです。「中澄み」は一部の辞書に出てきますが、濁り酒の一種を指す言葉で、液体の層を表す一般的な言葉ではありません。「下澄み」は辞書にも見当たらず、3つをセットで使うことはまずありません。

[記事作成にあたっては、以下の書籍・辞書・サイトを参考にしています]

『デジタル大辞泉』(小学館)
『新明解国語辞典』第八版(三省堂)
『精選版
日本国語大辞典』(小学館)

1.「上澄み」はどんな意味?

『デジタル大辞泉』(小学館)では、「上澄み」は次のように説明されています。
・容器に入っている液体の中のまざり物が底に沈んで、上方にできる澄んだ部分。うわしる。
・濁り酒のかすをよどませて、上の澄んだ部分をくみ取ったもの。

『新明解国語辞典』第八版(三省堂)にも、一つ目とほぼ同じ意味が載っています。
・液体の中に溶けて(混じって)いる物が底の方に沈んで、上の方に出来る澄んだ部分。

泥水をしばらく置いておくと、泥が底に沈んで上のほうがきれいになります。この澄んだ部分が「上澄み」です。

この「上澄み」は、日常では比喩としても使われます。

一つは「議論の上澄みだけをすくう」のように、表面のよいところだけを取るという意味です。

もう一つは、集団の中で特に優れた人たちを指す使い方です。SNSや掲示板、動画のコメント欄などでよく見かけます。スポーツやアニメだけでなく、アイドルや配信の話題でも使われています。

「あの選手は、プロの中でも上澄みと言っていい実力だ」
「このキャラは、作中でも上澄み中の上澄みだと思う」
「歌もダンスもこのレベルなら、今のアイドルでも上澄みのほうだと思う」
「同接1万超えは、個人勢の中でもかなりの上澄み」
「SNSでよく見る『月収100万の配信者』なんて、ほんの上澄みだから」

「上澄み中の上澄み」のように言葉を重ねて、その中でも特に優れていることを強調する言い方もあります。また、最後の例のように、「ほんの上澄み」「上澄みしか見えていない」といった形で使われることもあります。ネットで目に入るのは、ごく一部の成功した人たちにすぎない、という意味です。

ただ、集団の中で優れた人を指す使い方は、辞書の語釈には載っておらず、受け取り方は人によって分かれます。もともとの比喩には「表面だけ」という少し否定的な意味合いがあります。そのため、ほめ言葉のつもりで使っても、相手にそう伝わらない場合があります。

2.「中澄み」は存在する?

液体の真ん中あたりの層を「中澄み」と呼ぶ言い方は、一般的ではありません。意味はなんとなく想像できても、聞いた人には伝わりにくい表現です。

ただし、一部の辞書には「中澄み」という語が出てきます。見出し語ではなく、『デジタル大辞泉』の「中汲み(なかくみ)」の項目の中です。

・濁り酒の一種。上澄みと底のよどみとの中間を汲み取ったもの。中澄み。

つまり「中澄み」は、「中汲み」の別名として載っています。指しているのは濁り酒の一種で、「真ん中の層が澄んでいる」という意味の言葉ではありません。

なお、『新明解国語辞典』には、「中澄み」という語は載っていません。辞書によって扱いが分かれる、まれな言葉と言えます。

3.「下澄み」は存在する?

「下澄み」は一般的な言葉としては使われず、辞書にも見当たりません。

「上澄み」は、混ざり物が底に沈んだときに上にできる澄んだ部分のことです。この場合、下にたまるのは濁りや沈んだ物です。下のほうは澄むどころか、いちばん濁っている部分です。

この下にたまった物は、「沈殿物」や「澱(おり)」と呼ぶのが一般的です。

一方、油の粒のように、混ざり物が液体より軽くて上に浮かぶ場合は、逆に下のほうが澄んでくることもあります。ただ、そうしてできた下の澄んだ部分を「下澄み」と呼ぶ言い方は、一般的ではありません。

おわりに

「上澄み」は、辞書にも載っている言葉です。「中澄み」は、濁り酒「中汲み」の別名として一部の辞書に載っています。上澄みとよどみの間をくみ取った酒のことで、液体一般の真ん中の層を表す言葉ではありません。「下澄み」は一般的な言葉ではなく、辞書にも見当たりません。

液体の層を3つに分けて表したいときは、「上層・中層・下層」や「上部・中ほど・底部」と言うのが自然です。

「上澄み」「中澄み」「下澄み」を3つのコンボで使うことは、残念ながらなさそうです。