
ゲラの意味は?[校正者用]
▼ ゲラとは?
印刷出版業界でよく使われる用語「ゲラ」は、
「校正を行うために仮に印刷した印刷物」のことを言います。
【出典:日本印刷産業連合会_印刷用語集】
簡単に言うと「校正用に出力された紙」ということです。
ここでの「校正」という言葉は、校正者だけがする「校正」を指しているわけではありません。校正という作業は、校正者だけなく、クライアント・編集・デザイナーなど、制作物に携わる人が何らかの形でしています。その制作物の校正をするすべての人を対象としています。
▼ ゲラと同じ意味で使われる用語
「ゲラ」「ゲラ刷り」「校正刷り」は、それぞれの言葉の語源まで遡れば意味が違ってきますが、現在ではすべて同じ意味として扱われています。
「校正刷り・ゲラ・試し刷り」の英語表記が “proof ” となるため、ゲラは「プルーフ」とも呼ばれます。
また、単純にゲラのことを「校正紙」と呼ぶ場合もあります。
さらに、「カンプ(comprehensive)」と呼ばれることも稀にあります。ただ、カンプは最終の仕上がりイメージを再現した出力物を指しているので、少し意味合いが違ってきます。
▼ まとめると、次のようになります。
ゲラ = ゲラ刷り = 校正刷り = プルーフ(proof) = 校正紙 ≒ カンプ
会社や職種、個人によって使う名称は違ってきますが、
差しているものは皆同じで「校正用に出力された紙」です。
▼ ゲラの使い方
「22ページのゲラが抜けてるんですが、出力してもらえませんか?」
「そっちのゲラがクライアント用で、このゲラが校正さん用です」
「このゲラのPDFもらえますか?」 などになります。
校正者にとって、ゲラは赤字や疑問出しをする上で欠かせないものですが、それ以外にも、ゲラを手に取ったときに確認すべき重要なポイントがあります。
ゲラで見るポイント解説[校正者用]
1:実際のゲラ
▼ ゲラ
版型が、A4サイズ(210 mm×297 mm)のものを、
B4用紙(257 mm×364 mm)で出力したという想定です。
【誌面内の文章は、Wikipedia「夏目漱石」より抜粋】
・参考までに上のデータのPDFです。≫ PDF
2:基準となるトンボ
▼ 確認すべきポイント1
まず、ゲラを見るときは「トンボ」を確認します。
四隅にある赤丸部分がトンボです。
トンボは、印刷時の基準点となるものですが、校正者にとっても重要な役割を果たします。
このトンボがあることによって「仕上がり線」の位置がわかります。
3:仕上がり線と断裁
▼ 確認すべきポイント2
トンボの次に「仕上がり線」を確認します。
仕上がり線は、トンボ内側の赤枠の囲み罫の部分にあたります。
仕上がり線は、トンボが基準となり、トンボがないと位置もわかりません。
仕上がり線は、断ち切り線とも呼ばれ、印刷・製本時にこの線で断裁されます(紙が切られます)。
▼ 断裁後
・断裁後は、読者が目にする実際の誌面サイズになります。
▼ 断裁前と断裁後を並べた状態です。
校正するときは、左側のように赤字や疑問出しを書くスペースを確保するため、大きめの用紙に出力します。そのため、余白が多いように感じます。
ですが、実際は右側のように、仕上がり線上で断裁されるため余白はかなり少ないです。
▼ 断裁時によくあるミス
(1)仕上がり線上に文字があると、断裁時に文字が切れてしまいます。
[断裁前]
仕上がり線上に文字がありますが、周りに余白があるため一見すると問題がないように見えます。
[断裁後]
仕上がり線より外側の文字が切れてしまいます。
(2)仕上がり線に文字が近いと、断裁後は文字が読みづらくなります。
[断裁前]
(1)の場合よりも、おかしいと気づくのがさらに難しくなります。
[断裁後]
文字が誌面の端のギリギリになり読みづらくなります。
断裁後を見れば誰でもおかしいと気づきますが、断裁前のゲラでは余白があるために気づきにくくなってきます。
以上のようなことは、文字だけでなく画像やイラストに対しても起こりえます。
ですが、仕上がり線の位置を意識しておくだけで、この手のミスは防げます。
そのため、ゲラを見たときは、
まず「トンボ」を確認する。
そして「仕上がり線」をイメージする。
この2つが重要なポイントになってきます。
※校正を始めた頃は、仕上がり線をイメージすることが難しいので、物差しで線を引いたり物差しを当てるなどして確認してみください。
【関連記事】≫
校正ゲラのトンボと塗り足し:ピンポイント解説
【補足】ゲラで色の確認はできる?
ある程度経験のある校正者でも知らないことが多いですが、一般的な普通紙のゲラでは色の確認はできません。
「赤から青に変更」など明らかな違いならわかりますが、ゲラを見て「赤味が強い」「発色が悪い」などの判断はできません。仮にそう見えたとしても、それらは、プリンターの設定や部屋の光源などによって何とでも変化してきます。環境が変われば、「赤味がちょうどよく」「発色もいい」ということもあります。
色の確認は、色校正という工程があるのでそこで確認します。一般的なゲラでは、色の確認はしません。
各辞書でのゲラの意味
印刷出版業界は、古くから使われている用語が多く、会社や人によって基準が変わってくることもあります。校正を始めたばかりの人にとっては、迷うことも多いと思います。
以下に各辞書での「ゲラ」の意味を載せていますが、辞書に載っているからという理由でその用語を使うというよりも、自分の置かれた環境で相手に通じる言葉を選ぶことが大切です。あくまで参考程度にしてください。
▼ ブリタニカ国際大百科事典_小項目事典「校正刷り」より
校正用にためし刷りしたもの。ゲラまたはゲラ刷りともいう。組上げた活字版を収めておく長方形の盤を英語でギャリー galleyというが、それがなまってゲラとなったものである。
▼ 編集校正小辞典_ダヴィッド社「校正刷」より
校正刷はゲラ刷または単にゲラとよばれています。これは、以前活字組版において、ページに形に組まれた版を収めるための盆をゲラ(英語のギャリーgalleyのなまったもの)とよんでいたので、そこからきた名前です。
▼ Wikipedia「校正」「組版」より
[校正]
校正刷りは、「ゲラ刷り」 (en:Galley proof) とも呼ぶ。ゲラ(galley)とは、活字を並べる枠箱(ガレー船を喩えたもの、「組版」を参照)が転じて、刷ったものを表し、さらに転じて一般に誤植をチェックすべきものをいう。
[組版]
活字を並べる枠箱を英語で galley (ガレー船を喩えたもの)と呼び、これが転じて刷ったものを表し、さらに転じて校正刷りを「ゲラ」というようになった
▼ 日本印刷産業連合会_印刷用語集「校正刷り」より
(1) 校正を行うために仮に印刷した印刷物。活字組版では原版から刷られ、ゲラ刷り(またはゲラ)ともいう。
(2) 校正に用いるための仮刷り。