デジタル校正ソフトの導入をデメリットから考えてみる

デジタル校正ソフトの導入をデメリットから考えてみる

十数年前から徐々にではありますが、デジタル校正ソフトも進化してきています。部分最適には非常に効果的なものですが、完全に人に置き換われるソフトはまだ存在しません。

校正作業に限れば、決してデジタルが効率、アナログが非効率というわけではなく、どの場面で使うかによって効果が変わってきます。

デジタルが非効率な場面もあれば、アナログのほうが効率的ということもあります。逆も同様です。

ここでのデジタル校正とは、ソフト(アプリ、ツールを含む)を使用しての校正作業のことを言っています。従来の「人」がする校正作業は、“デジタル校正”と対比させて“アナログ校正”としています。

デジタル校正は、校正する人の負荷軽減だけでなく、校正自体を部分的に担ってくれることもあります。校正をするのは専門の校正者だけではないので、クライアント・編集者・デザイナー・ライター・進行等、たくさんの職種で役立つものです。

デジタル校正は、校正者が主に使うというよりも、校正者が校正する前工程で使用することで、全体の効率化・品質向上を図っていくものです。

1:デジタル校正ソフトの例

1-1:デジタル検版

デジタル校正ソフトと聞けば、デジタル検版をあげる人は多いと思います。実際にその効果を体験している人もたくさんいるはずです。

デジタル検版を簡単に説明すれば、修正前と修正後のデータ(PDF)を比較するものです。どこが修正されたかがわかるので、修正モレなどがあるとすぐわかります。

これは、修正前と修正後のデータの差(違い)を知ることから、差分チェックなどとも呼ばれます。

デジタル検版について詳しく知りたいなら、以下のサイトで動画解説されています。デモ版もダウンロードすることができます。

デジタル校正ソフト
>デジタル校正ソフトウェア(PDF比較)

このProof Checker PROだけでなく、他にもデジタル検版ができるソフトはたくさんあります。価格もピンキリです。いいソフトになれば、ある程度文字情報を理解した上で差を比較してくれます。また、検索精度を自分で微調整することも可能です。

このデジタル検版により、校正時のパタパタといわれる作業が省力化できます。品質を維持しつつ、時間も大幅に短縮することが可能です。

【関連記事】> 校正のパタパタ(あおり校正)[動画]

1-2:オンライン校正

オンライン校正では、原稿管理を一元化でき、制作フロー全体を見直して効率化することができます。直接的というよりも、間接的に校正の負荷を軽減してくれます。

オンライン上で原稿作成・確認・進捗管理ができます。上記のデジタル検版機能も付いているものも多いです。

顧客担当が多い、制作の関与者が多い場合には有効です。制作フロー全体にかかわるので、マンパワーに頼る会社などでは相性がよくないかもしれません。

オンライン校正
> Brushup

デジタル校正ソフト
> APROOVE(アプルーブ)


【関連記事】> オンライン校正の基本的な考え方。どのオンライン校正ツールがおすすめ?

1-3:文章校正支援ソフト

文章校正支援ソフトは、無料のソフトから有料のものまで豊富にあります。身近なソフトであるWordにも校閲の支援機能がついています。

校正者やライターなどは、デジタル校正ソフトと聞くと、この手のソフトをイメージする方が多いかもしれません。

文章の誤字脱字・表記ゆれなどは、人の目だけで確認するよりもデータ上で先に潰しておくほうが、校正時の負担が軽減されます。そこで、校正支援ソフトが役立ちます。

校正支援ソフトのメリットは、カスタマイズすることによって精度を上げることができることです。

固有名詞やあらかじめ決められている表記ルール、文章の体裁などをソフトに登録しておけば、それらの間違いも高い精度で指摘してくれます。特定の業界に特化している媒体なら、校正支援ソフトの導入は有効です。

〈文章の間違い〉誤字脱字、表記ゆれ、文章の体裁など

よくある間違いや表記ルール・文章の体裁などは、人が頭で覚えて探すよりも校正ソフトにそれらの情報を登録して検索するほうが圧倒的に効率がいいです。

すべての間違いを見つけることはできませんが、30%~80%ぐらいは事前に見つけることができます。使うと使わないでは校正にかかる負荷は大きく違ってきます。

※検索精度に幅があるのは、校正支援ソフトが文章の構造に依存するためです。一つの文が長かったり、形容詞や副詞が多かったりすると、間違いを指摘する精度は低くなってきます。

有料ソフト

1.文章校正支援ツール Just Right!6 Pro ※体験版あり

デジタル校正ソフト

2.日本語校正支援ソフトPress Term®  ※体験版あり

デジタル校正ソフト

3.AI editor(AI・機械学習の技術を活用した文章校閲ソリューション)※動画解説あり

デジタル校正ソフト

 無料ツール

デジタル校正ソフト
> 文章校正と表記ゆれチェックツール
※Chromeの拡張機能

【補足】
デジタル校正ソフト
> テキスト解析:校正支援
※Yahoo!デベロッパーネットワークが提供するWeb AP

開発者向けです。Webで校正サービスを提供しているサイトでは、このAPIを使用しているサイトが多くあります。
サイト選びをする際には、何を基に文章の解析を行っているかも基準になります。

1-4:文章作成サポート

文章作成時にリアルタイムで精度を高めたいなら、入力時のサポートをしてくれる「文賢」や「Shodo」などのソフトが有効です。入力時だけでなく、既に入力した文章の校閲をすることもできます。

デジタル校正ソフト
> 文章作成アドバイスツール【文賢】

AI校正サービス
> AI校正・執筆サービス

入力時の間違いが少なくなることは校正にかかる手間だけでなく、間違いを修正する手間もなくなるため全体の効率化につなげることができます。

「1-3」の文章校正支援ソフトと併用する必要はないですが、リアルタイムで間違いを探すというなら、こちらに分があります。文章を自分(自社)で作るなら導入を検討してもいいツールです。

一方、テキスト原稿は常にクライアントから支給される(=自分で一から作成しない)というなら、導入は考えたほうがいいかもしれません。

1-5:自作の校正ツール

デジタル校正ソフトは、フリーや有料のソフトだけではありません。簡易的なものなら自分で作ることもできます。

自社専用の校正ソフトを開発している企業も普通にあります。大手企業だけでなくとも中小でも社内用の校正ソフトを開発しているのは、今では珍しいことでもありません。

2:デジタル校正ソフトの導入に失敗しないために

次のような場合、デジタル校正ソフトを導入してもうまくいかない可能性があります。

  • デジタル校正に過剰な期待をよせている
  • 校正業務を知らない人が、デジタル校正導入の推進者になっている
  • アナログ校正(紙)にこだわる校正者が、デジタル校正導入の推進者になっている
  • デジタル校正を導入して、何を解決したいか明確になっていない

他にも、柔軟に業務フローを見直せる体制であるかが重要です。

デジタル校正ありきで改善を考えていたり、導入の推進者が適任でなっかたりする場合は、デジタル校正のいい面ばかりの情報を鵜呑みにしがちです。そうなると、期待値ばかりが高くなり検証が疎かになります。

デジタル校正は導入してから効果が上がるものではなく、導入する前からその効果がある程度想定できます。そのためには、導入前に何を改善したいか明確にしておくことが大切です。

何を改善したいかは、会社の規模や媒体によって様々だと思いますが、この部分を明確にしておかないと、実際に運用する際に現場のモチベーションは上がりません。思うような効果が得られません。

安易に導入してしまうと使えないソフトで終わってしまいます。

3:改善点の見極め

何を改善したいかは、日々の業務で起こる問題から探ることです。
問題という重い感じでとらえなくても、「困りごと・面倒なこと」のレベルで情報を集めたほうがいいかもしれません。

  • 定期的に発生する作業
  • 手順が決まっている作業
  • 単純作業
  • 時間がかかる作業
  • 頻繁に起こる間違い

などを軸に考えていきます。

出てきた困りごとや面倒なことに対して、
デジタル校正ソフトで解決できるのか? 解決できないのか?
それを見極める必要があります。

これは実際に、ソフトの体験版で自分で検証できます。有料版ならソフトの販売元のサポートセンターなどに聞いてみるのも手です。直接目の前でデモをしてくれる場合もあります。

  • 原稿が多くて困っているなら   → オンライン校正で一元化
  • パタパタ作業に時間がかかるなら → デジタル検版
  • 文章作成時の入力間違いが多いなら → 文賢
  • 支給されたテキスト原稿の校閲なら → ジャストライト
  • 決まりきった表記ゆれのチェックだけなら → PDFの高度な検索

など、場面によって適切なデジタル校正ソフトを検討していかなければいけません。また、わざわざ有料ソフトを購入しなくても、WordやPDFで解決できることもあります。

そのため、何を改善したいかを明確にしておくことは一番重要です。

4:デジタル校正の導入を阻むもの

『改善点が見えてこない…』ということもあります。
デジタル校正の導入を阻むものは、やはり問題意識です。

「今のやり方が最善だ」「人の手でやるのが当たり前だ」と思っていると問題が浮き彫りになりにくいです。

問題意識をもってもらうには、デジタル校正ソフトでできることを皆で共有しておくことです。

この手のことは、口で説明するよりも体感してもらうほうが手っ取り早いです。動画や体験版などを利用して、実務レベルに落とし込んで共有するほうがうまくいきます。

5:デジタル校正に合わせる

デジタル校正ソフトをそのまま使えなくても、自分の業務を少し変えれば活用できることもあります。業務の見直しも含めて、色々な視点で考えてみることも大切です。

自分がデジタル校正側に合わせることで、要所要所で効率化できる部分が見えてくることも多いです。

デジタルツールを活用するために、業務フローを見直す必要もあるかもしれません。仮に、一工程、二工程増えたとしても、全体をみれば効率化できるということは多くあります。

6:今後のデジタル校正との付き合い方

今後の出版・印刷・広告業界の状況を見て、校正のデジタル化がどこまで浸透していくかはわかりませんが、人の目に頼るアナログ校正が拡大していくことは、まず考えられません。

そのため、今から少しでもデジタル校正ソフトに触れておくことをおすすめします。

すぐに導入する予定はなくとも、デジタル校正で何ができるかだけでも知っておくと、日々の業務の中で、デジタル校正ソフトの使用できる場面を見極める判断材料になってきます。デジタル校正でできることに対して、人の力を費やしていく必要はありません。

一方、デジタル校正でできないこと・デジタル校正が苦手なことを知っておくと、そこが今後人が注力していく部分だとわかってきます。