文章を読む集中力を高めたい人へ:散漫になる理由を知り深く読むコツを身につける

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文章を読む集中力を高めたい人へ:散漫になる理由を知り深く読むコツを身につける

文章を読んでいると、途中でふっと集中が切れたり、「あれ、今どこを読んでいたんだっけ」と同じところを読み返したりすることがあると思います。

これは、仕事の資料、Webの記事、説明書、資格のテキストなど、どのような文章でも起こります。

目は文字を追っているのに、内容が頭に入ってこない。何行か読んだはずなのに、あとから思い返すと何も残っていない。

このようなとき、「自分は集中力がないのでは」「理解力が乏しいのでは」「読むのが苦手なのでは」と、色々と感じることもあるかもしれません。ですが、一概にそうとはいえません。

この記事を読めば、集中が切れる本当の理由がわかり、「気合」ではなく「読み方の工夫」で集中を保つコツがわかります。

1. 文章を読むことは、意外と負荷の高い作業

1-① 文章を読むのは「文字を見るだけ」の作業ではない

文章を読むとき、目で文字を追っているだけではありません。目に入った文字を言葉として認識し、その意味を理解し、前後の文とのつながりを確かめながら、「この文章は何を言おうとしているのか」を頭の中で組み立てています。

さらに、次のようなことも無意識のうちに判断しています。
・どの情報が重要なのか
・前に出てきた内容とどう関係しているのか
・この先にどのような説明が続くのか

読むという行為は静かな作業に見えますが、頭の中ではいくつもの働きが同時に動いています。そのため、思っている以上に頭を使う活動なのです。

具体的には、次のような処理が同時に行われています。
・文字を文字として読み取る
・単語の意味を理解する
・文の流れをつかむ
・前後の内容をつなげる
・何が大事かを判断する
・この先に何が書かれそうかを考える

つまり、文章を読むことは、文字を順番に見るだけではなく、内容を頭の中で少しずつ組み立てていく作業です。この作業は、文章が長ければ長いほど、何度も繰り返されます。

1-② 読むときには「一時的に覚えておく力」が使われている

文章を読むときには、「作業記憶」と呼ばれる頭の働きが使われています。作業記憶とは、いま読んでいる内容を一時的に頭の中に保ちながら、前に読んだ情報や後に続く情報とつなげる働きのことです。ただ、この作業記憶には限りがあります。

情報を一度に抱え込みすぎると、前に読んだ内容を保ちながら、新しい内容を理解することが難しくなります。

たとえば、家電の取扱説明書に次のような文があったとします。

本体背面の端子Aに付属ケーブルを接続し、初回起動時にはリモコンの設定ボタンを長押ししてから、本体側のインジケーターが青に変わるのを待ち、青になったらアプリ側で機種コードを入力してください。

この一文の中には、次のように覚えておくべき対象が次々に出てきます。
・端子A
・リモコン
・インジケーター
・アプリ

最後まで読むころには、最初に出てきた「端子A」がどこだったか曖昧になることがあります。これは読む力がないのではなく、頭の中で一度に覚えておく量が多くなりすぎた状態です。「頭がこんがらがる」という感覚は、このような状態から起こります。

その結果、次のようなことが起こります。
・話のつながりがわからなくなる
・最初に何を説明していたのか忘れる
・途中で出てきた言葉の意味を見失う

2. 読みにくい文章は、集中力を消耗させる

2-① 集中力は文章そのものにも左右される

集中力は、いつまでも同じ強さで続くものではありません。読む時間が長くなったり、理解しなければならない情報が増えたりすると、少しずつ弱まっていきます。長く読み続けるほど、あるいは内容が難しくなるほど、最初のうちは保てていた集中が徐々に削られていきます。

ここで見落とされがちなのが、その消耗の速さは「読む人の能力」だけでなく、「読む対象である文章そのもの」にも大きく左右されるという点です。

文章を読んでいるとき、一つのことだけに注意を向けているようで、実際にはいくつもの対象に注意を向けています。

文字を見る    → 見落とさずに読む 
・意味をつかむ   → 何を言っているか理解する 
・流れを追う    → 前後のつながりを保つ 
・大事な部分を選ぶ → 重要かどうかを見極める 
・感じ方も動く   → 面白い、難しい、退屈などを感じる

このうち、どれか一つに負担がかかりすぎると、ほかの処理に使える余力が少なくなります。

2-② 読みにくい文章ほど、注意力を多く使う

たとえば、次のような文章では、内容を理解するだけで多くの注意力を使います。

・抽象的な言葉が多い
・専門用語が多い
・結論がなかなか出てこない
・どこが重要なのかわかりにくい
・一つの文が長い
・主語と述語が離れている
・指示語が多い

このような文章を読むと、目は文字を追っていても、内容が頭に入りにくくなります。これは「ちゃんと読んでいない」というより、理解するために必要な力が大きくなりすぎている状態です。

注意力が足りないのではなく、その文章を理解するために多くの力を使っている、と考えるほうが自然です。

読みやすい文章は、意味をつかむための道筋が整っています。反対に、読みにくい文章は、読者が自分で道筋を探しながら読む必要があります。その分、集中力も早く使われてしまいます。

3. 頭は「意味が取れない状態」が苦手

3-① 人は先を予測しながら読んでいる

人は文章を読むとき、ただ目の前の一文を理解するだけではありません。無意識のうちに「この先どう展開するか」を想像しながら読み進めています。これは特別な訓練の結果ではなく、誰もが自然に行っている読み方です。

人は、次に来る内容をある程度思い浮かべながら読むことで、実際にその内容が出てきたときに理解しやすくなります。

たとえば、次のようなことを考えながら読んでいます。
・次はこういう話が来るだろう
・この文は前の説明を補足しているのだろう
・ここでは理由を説明しているのだろう
・このあとに具体例が出てくるのだろう
・最終的にはこの結論に向かっているのだろう

文章の流れが自然であれば、この予測は理解を助けてくれます。次に来る内容をある程度予想できるので、読み手は安心して読み進められます。

3-② 予測が外れ続けると、読む負担が大きくなる

しかし、文章の構造がわかりにくいと、この予測が何度も外れます。

たとえば、次のような文章です。
・話題が急に変わる
・結論が見えにくい
・抽象的な説明が続く
・具体例が少ない
・前の話とのつながりが見えにくい

このような状態が続くと、頭は「この文章は理解しづらい」と感じます。読むのが大変になってくると、知らないうちに、スマホや別の用事、考え事などへ気持ちが向きやすくなります。

これは怠けているというより、頭が「いったん負荷の低い方向へ逃げよう」としている状態に近いものです。

4.「わかりにくい」が続くと、注意は別の刺激に移る

4-① 集中は突然切れるのではない

集中が切れるとき、それはある瞬間に突然プツリと途切れるわけではありません。多くの場合、その手前で「理解しにくい」という負荷が少しずつ積み重なり、注意が徐々に弱まっていった結果として、最終的に集中が途切れます。

つまり、集中が切れた瞬間だけが問題なのではありません。その前から、読みづらさや理解しにくさが少しずつ積み重なっているのです。

次のような流れで、少しずつ注意が離れていきます。
1. 文章を読み始める
2. わかりにくい部分が出てくる
3. 前後のつながりが曖昧になる
4. 理解するのに負担がかかる
5. 頭が疲れてくる
6. 内容への関心が弱くなる
7. スマホ、周囲の音、考え事などが気になる
8. 目だけで文字を追う
9. 内容が頭に残らない
10. 同じところを読み返す

ここで大切なのは、集中が切れる前に、すでに「理解しにくい」という状態が起きていることです。

つまり、
集中できないから読めない
だけではなく、
読みにくいから集中できなくなる
という場合も多いのです。

4-② 読みにくさと別の刺激が重なると、集中は途切れやすい

たとえば、通勤電車の中でビジネス系の長文記事を開いたとします。最初の数段落は読めていたものの、専門用語が増えたあたりで一度つまずきます。

そのとき、画面上部に届いた通知が目に入り、戻ってきたときには「どこを読んでいたか」がわからなくなっている。これは意志が弱いからではありません。読みにくさで頭が疲れているところに、通知のような気を取られやすいものが入ってきたために起こる自然な反応です。

また、「とりあえず読まなければ」と思って読み始めた文章は、何を得ればよいのかがはっきりしていません。そのため、頭はすべての情報を同じ重さで処理しようとします。

すべてを同じように大事だと思って読むと、どこに注意を向ければよいのかわかりにくくなります。その結果、少し難しい部分に出会っただけで、集中が途切れやすくなるのです。

5. 集中を妨げるものには、周囲から来るものと自分の中から出てくるものがある

集中を妨げるものは、周囲の音やスマホの通知のように、外から入ってくるものだけではありません。実際には、疲れや眠気、焦り、気がかりな用事など、自分の内側から生まれる刺激も、文章を読む集中を大きく妨げます。

外側の刺激は原因が見えやすい一方で、内側の刺激は自覚しにくく、気づかないうちに注意を奪っていきます。

文章を読んでいるはずなのに別のことを考えてしまうときは、外部環境だけでなく、頭の中に残っている未完了の用事や不安が影響している場合もあります。

周囲から入ってくるもの:スマホの通知、周囲の音、机の上の物、SNSやメール 
自分の中から出てくるもの:眠気、疲れ、気がかり、焦り、考え事

外側の刺激はわかりやすいです。通知音、話し声、机の上の物などは、注意を外へ向けさせます。

一方で、意外に強いのが内側の刺激です。頭の中に気になる用事が残っていると、文章を読んでいても、次のような考えが割り込んできます。

・あの件に返信しないと
・今日中に終わらせることがあった気がする
・このあと時間は足りるだろうか

これは、終わっていない用事を頭が忘れないようにしているためです。気になることがある限り、頭の一部はずっとその情報を抱えたままになります。

その分、文章に向けられる注意が少なくなり、読んでいる途中で別のことを考えやすくなります。

このような場合は、読む前に気になることをメモしておくだけでも、少し楽になります。メモに書くことで、頭の中で抱えていた気がかりを外に預けられるためです。

6. 集中を保つには「気合」よりも読み方を整える

集中を続けようとするとき、多くの人は「もっと気合を入れて読もう」「気を引き締めて最後まで読み切ろう」と、自分の意志の力に頼ろうとします。

しかし、意志だけで集中を維持し続けるのは難しく、消耗も早くなりがちです。

それよりも、あらかじめ読みやすい状態を整え、頭にかかる負担そのものを下げておくほうが、結果として無理なく集中を保ちやすくなります。

6-① 読む前にできる工夫

文章を読み始める前に、次のような準備をしておくと、集中しやすくなります。

・先に見出しだけ読んで、全体の流れをつかむ
・結論やまとめを先に読んで、大まかな方向を知る
・「何を知りたいか」を一つ決めてから読み始める
・スマホを視界から外す
・通知を切る

特に効果的なのは、読む前に次の問いを置くことです。
この文章から何を知りたいのか?

目的があると、頭は重要な情報を選びやすくなります。反対に、目的がないと、すべての情報を同じ重さで処理しようとして、注意が散りやすくなります。

6-② 読んでいる途中にできる工夫

読んでいる途中で集中が落ちてきたら、無理に読み進めるより、少し読み方を変えるほうが効果的です。

・長い文章は段落ごとに区切って読む
・わからない箇所に印を付けて、いったん先へ進む
・重要そうな言葉だけ軽くメモする
・具体例を探しながら読む
・接続語に注目して、話の流れをつかむ

わからないところが出てきたとき、すぐに戻って読み直したくなることがあります。

しかし、何度も止まると、全体の流れが見えにくくなることもあります。そのようなときは、いったん印を付けて先へ進むのも一つの方法です。

あとから全体像が見えると、最初にわからなかった部分が理解しやすくなることがあります。

おわりに

文章を読んでいて散漫になるのは、必ずしも集中力が足りないからではありません。

読みにくい文章を前にすると、頭は意味をつなげるために多くの力を使います。前後の関係を保ち、重要な部分を判断し、先の展開を予測しながら読むため、自然と疲れやすくなります。

集中力を無理に高めようとする前に、まずは集中が切れにくい読み方を整えることが、文章を読むうえでの大切なコツです。