「痛む」「傷む」の違いは?「いたむ」の使い分けと例文

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「痛む」「傷む」の違いは?「いたむ」の使い分けと例文

「いたむ」という語には、主に「痛む」「傷む」の漢字が使われます。どちらもよく目にする表記ですが、意味によって使い方が違います。

この記事では、「痛む」「傷む」の使い分けとニュアンスの違いを、例文とともに紹介します。あわせて、「悼む」についても補足します。

[記事作成にあたっては、以下の書籍・辞書・サイトを参考にしています]

『「異字同訓」の漢字の使い分け例(報告)』(文化審議会国語分科会)
『常用漢字表の音訓索引』(文化庁)
『記者ハンドブック 新聞用字用語集』(共同通信社)

『デジタル大辞泉』(小学館)

1.「苦痛」か「損傷・劣化」かで判断する

「痛む」と「傷む」は、何を表しているのかによって選び分けます。

① 痛む → 肉体や精神に苦痛を感じる

<例文>
「虫歯が痛む」
「雨の日は古傷が痛む」
「被災地の映像を見ると胸が痛む」

② 傷む → 物や食材が損なわれる、劣化する

<例文>
「夏場は食材が傷みやすい」
「雨漏りで家屋が傷む」
「カラーリングを繰り返して髪が傷む」

「痛む」と「傷む」を区別するポイントは、「苦痛を感じる」のか、「そのものの状態が損なわれる」のかです。

たとえば、「頭皮が痛む」は痛みを感じること、「髪が傷む」は髪の状態が悪くなることを表します。また、出費がかさんでつらいことを表す「懐が痛む」も、苦痛の比喩なので「痛む」と書きます。

2. 使い分けに迷う表現「心がいたむ」

使い分けで迷いやすいのが「心がいたむ」という表現です。

精神的な苦痛を、体の痛みになぞらえて表す場合は「痛む」と書くのが一般的です。悲しみだけでなく、心配や後悔などによる苦しさにも使います。「心痛」という熟語も、この捉え方に沿った言葉です。

例:祖母の訃報に接し、心が痛む。

なお、心がすり減り、損なわれていく様子を表すために、「傷む」を使う場合もあります。

例:職場の重責を負い続けるうちに、心が少しずつ傷んでいった。

ただし、「心が傷む」は一般的な表記とは言えません。心が損なわれていく様子を伝えたいときは、「心が傷つく」「心がすり減る」などと言い換えると、意味が伝わりやすくなります。

3. 人の死を悲しむときは「悼む」

「いたむ」には、人の死を嘆き悲しむ意味の「悼む」もあります。

<例文>
「恩師の死を悼む」
「犠牲者を悼み、黙とうをささげる」

「悼」は、「追悼」「哀悼」に使われる字です。「死を悼む」だけでなく、「故人を悼む」のように、亡くなった人を直接対象にすることもできます。一方、失恋や別れなど、死を伴わない悲しみには通常使いません。

人の死に関する文章でも、必ず「悼む」になるわけではありません。「友の死を悼む」は亡くなったことへの悲しみを、「友の死を知り、心が痛む」は知らせを受けた自分の苦痛を表しています。

4. 常用漢字表と表記の基準

「痛」「傷」「悼」は、いずれも常用漢字表に「いたむ」の訓が載っています。「痛」「傷」には「いためる」の訓もあります。どれが標準的な漢字というわけではなく、意味に合わせて選ぶことが大切です。

いたむ・いためる
→「痛む・痛める」「傷む・傷める」

いたむ
→「悼む」

【参照HP】「常用漢字表の音訓索引」(文化庁)
https://www.bunka.go.jp/kokugo_nihongo/sisaku/joho/joho/kijun/naikaku/kanji/joyokanjisakuin/index.html

文化審議会国語分科会の「異字同訓」の漢字の使い分け例でも、「痛む」は肉体や精神に苦痛を感じること、「傷む」は傷がついたり質が劣化したりすること、「悼む」は人の死を嘆き悲しむこととして区別されています。

【参照PDF】「異字同訓」の漢字の使い分け例(文化審議会国語分科会)
https://www.bunka.go.jp/seisaku/bunkashingikai/kokugo/hokoku/pdf/93927001_12.pdf

おわりに

体や心に苦痛を感じるなら「痛む」、物や食材が損なわれるなら「傷む」というのが基本です。

表記で迷いがちな「心がいたむ」は、苦痛を感じる意味なら「痛む」と書きます。心が損なわれていく様子を表したい場合は、「傷つく」「すり減る」などと言い換えると伝わりやすくなります。なお、人の死を悲しむ場合は「悼む」と書きます。