校正の仕事で見落とし(ミス)が多い人の問題を考えてみました
どんな仕事でもどこかで壁にぶつかるということはあると思います。校正で見落としが多くて伸び悩んでいる人、スキルアップできない人の解決方法を考えてみました。
明確な答えはありませんが、それぞれの解決策があるはずです。
経験を積むことで解決するのか、考え方・やり方を変えることで解決するのか、一概に判断できませんが同じ校正者として悩むところ、悩んできたところは共通していると思います。
こうではないかという自分の実体験から想像してみたので、どれかにあてはまるようでしたら参考にしてみてください。
▼ 「見落としが多い人」を、2つのパターンにわけて考えます。
1. ケアレスミスが多くて大きな見落としにつながる人
2. 間違い自体に気づかずに見落とす人
1. ケアレスミスが多くて大きな見落としにつながる人
ケアレスミスが多いという人は、詰めが甘い・気が緩むタイプの人が多いように感じます。
こういうタイプの人は、校正に掛けた時間なのか、入れた赤字の量なのか、一定の水準に達したら自分で満足してしまい区切りをつける傾向にあります。
考え方・仕事への取り組む姿勢は、スキルや経験以上に大切なものです。
自分がどこかで満足してしまうタイプ、「もういいか」というようなタイプであれば、今一度注意が必要です。
基本的な考え方として、
「人は必ずミスをする」「人は必ず忘れる」という前提で行動すれば、仕事へのやり方も変わってくるはずです。どんなベテランの校正者でも必ず見落としをします。ただ、自分の努力や工夫次第で、見落としの確率を下げることはできます。
▼ 具体的な対策として
1. 受けた指示はすべてメモに残す
受けた指示が、たとえ簡単なことであっても決して頭で覚えようとしてはいけません。形に残す必要があります。
「これぐらいなら覚えられるからメモしなくていい」「簡単だから大丈夫」という慢心が、見落としにつながります。このような思考であるなら、ケアレスミスは絶対になくなりません。
大切なのは「自分は見落としをする」「自分はミスをするんだ」という前提で対処していくことです。
メモするのは、ベテランの校正者でもすることです。メモに残しておくと、作業モレを防ぐだけでなく、日にちが経ってからもその作業を振り返ることができます。その振り返りが記憶の定着につながり、経験値となっていきます。
また作業時に、自分が疑問に思った点や、つまずいたところもメモに残しておくと効果的です。忘れないうちに問題を解決することができます。
メモするのは面倒かもしれませんが、見落としを防ぐのに基本的で効果的な対策です。かつ未来の自分のスキルアップにつながります。
そのため、作業時には常に目に入る位置にメモを置いておく必要があります。
2. チェックリストをつくる
チェックリストといっても、最初から細かく作りこむのは大変なので長続きしません。あくまで自分用のチェックリストです。最初はざっくり項目分けして、徐々に肉付けしていくやり方がいいです。
最初のうちは『照合・素読み・ページ周りの確認・めくりあわせ・見直し』など大まかな作業項目にわけるだけで大丈夫です。
最初から気合を入れすぎて、たくさん項目を詰め込むと必ず失敗します。
3. 校正した箇所、原稿の確認した赤字には「レ点」でチェックをつける
レ点よりも効果的なのが、マーカーやダーマトで校正した箇所を目立つように消し込むことです。
チェックを付けることで、確認した箇所と確認していない箇所が明確になります。見直しするときに確認した箇所が一目瞭然になるので、確認漏れを防ぐのに有効です。
4.「見直し」の項目は絶対に忘れないようにチェックリストに入れておく
どんな簡単な校正でも見直しをする癖をつけておきましょう。見直しの際は、自分が入れた赤字や疑問出しも確認します。自分では正しく書いたつもりでも、必ず書き間違いは起こります。
特に自分で書いた文字は、正しく書いたと思い込んでいるので尚更間違いに気づきづらくなります。
また自分が校正した原稿の赤字すべてに、(レ点などの)チェックがついているかも確認します。チェック漏れがあると、その部分は校正していないということになります。
原稿やゲラにチェックを付けてはダメという現場もあると聞きますが、品質管理である以上は何らかの見たという証拠(チェックの印)を残す必要があります。
その証拠(チェックの印)が見直しの際に役立ちます。チェックを付けてはダメという環境であれば、ケアレスミスが起こる可能性は高く、個人というより体制に問題があるといえるかもしれません。
2. 間違い自体に気づかずに見落とす人
1. 適切な研修を受けてきたか?
自分が見落としたものを後からフィードバックされて「こういう間違いがあるのか」と思う人です。この手のタイプの人は、適切な研修を受けてこなかったことが大きな要因かもしれません。
とりあえずひたすら校正し続けて学んでいくという研修期間だったのでないかと推測します。
OJTでも悪くはないですが、実務重視だと見つける間違いに偏りが出てきます。研修期間に、たくさんの間違いに触れる機会がなかったと考えられます。
OJTに入る前に、ある程度基本的な間違いやよくある間違いを体系立てて教えてもらうことで、頭の中で間違いを整理できるようになり、応用力が身に付いていきます。
どんな仕事でも基本的な知識があって、そこに経験がプラスされることで成長していくものです。
2. 適切なフィードバックを受けてきたか?
適切なフィードバックを受けることは、次の気づきとなり改善に繋がります。
「ここ間違ってたよ。次は気を付けてね」
「はい、わかりました」
という研修では意味がありません。
これは教える側の責任ですが、
どうして間違ったのかを考えることが大切です。
単に見落としといっても原因は様々です。
- 単純な不注意
- 付近に赤字が入っていたからそれにつられて見落とした
- 原稿の指示を間違って解釈した
- 作業自体がモレていた
- 赤字のある付近しか見ていなかった etc.
「なぜ間違ったのか? → なぜを深堀りする → 改善につなげる」
この一連の流れを研修期間でしてこなかったことが、今の見落としに繋がっている可能性があります。
その原因に対して次はどう対処するかを、その都度考えていくことで少しずつ成長していきます。校正後に振り返らず、やりっぱなしでは何年経験を積んでもスキルアップは見込めません。
実社会では「そんなこと教えてもらっていません」というのは言い訳とされることがありますが、校正は「習うより慣れよ」の世界ではありません。教えてもらっていないことがわからないのは当然です。
▼ 対策として
1. 他の校正者の赤字を見る
今からできる対策として有効なのが、他の校正者が入れた赤字や疑問出しを見せてもらうことです。
他の校正者が入れた赤字や疑問出しを見ると、自分の経験からは思い浮かばなかった視点が生まれてきます。
- こういう間違いがあるのか
- こういう赤字を入れるのか
- こういう疑問出しをするのか etc.
違う校正者の視点を取り入れて校正に向かうだけでも、これまで何も引っかからなかったところに「ん?」と気づきが生まれてきます。
※数は少ないですが、現役の校正者が校正し終えたゲラを紹介している記事があります。参考になるようでしたらご覧ください。
2. スキルの振り返り
ある程度校正の経験を積んできているなら、一旦自分のスキルの振り返りをするのも効果的です。
いわゆるリフレクション(内省)というものです。研修体制が整った会社では、このリフレクションは大切にされています。リフレクションは、考え方の成長やスキルアップに非常に有効な手段です。
リフレクションする際には、自分が携わった過去の校正物や蓄積したメモやノートが一番の材料となりえます。
振り返りの材料がないという人は、エディタースクールの「校正練習著」が効果的です。基礎的なことは網羅されているので気づきも多くあると思います。自分に足りなかった基礎的な部分も見えてくるはずです。
自分の視点を広げる
自分一人で特殊な校正をしている人は例外ですが、一般的に校正者といわれる人には、大抵先人がいます。
誰かも同じ悩みをしてきたり乗り越えてきたりしています。見落としは、校正者なら誰もが経験します。
問題解決への一番の近道は、自分と環境が近い人に相談してみることです。扱う媒体や制作環境、経験年数などが自分と近ければ、抱える問題も似てくるはずです。ベテランの校正者のアドバイスが必ずしも適切とはいえません。
問題があるということは、解決すべき課題があるということで、スキルアップのチャンスでもあります。そのため、早めに自分に近い環境にいる人に相談したり意見を求めたりすることをおすすめします。
前向きな姿勢と適切な努力があれば、きっといい結果につながるはずです。