沿う(沿って)・添う(添って)の意味と違い[使い分けのポイント解説]
「沿う」と「添う」は、似たような意味を持つ言葉です。明確に使い分けが可能な場合もあれば、両方の漢字が使える場面もあります。
たとえば、
「この川に沿って歩く」では、沿うを使います。
「彼に寄り添って歩く」では、添うが適切です。
一方で、
「希望にそう」は、
「希望に沿う」とも「希望に添う」とも表すことができます。
「沿う」と「添う」は、「会社の方針に沿う」「顧客に寄り添う」など、ビジネスシーンでもよく使用される言葉です。意味や使い分け方を知っておくと役立つことも多くあります。
以下、両者の意味や違い、使い分けのポイントをわかりやすく解説していきます。
[記事作成にあたっては、以下の書籍・辞書・サイトを参考にしています]
・新明解国語辞典 第八版_三省堂
・記者ハンドブック 第14版_共同通信社
・広辞苑 第七版_岩波書店
・漢字の使い分けときあかし辞典_研究社
1.「沿う」の意味
「沿う」とは?
「沿」の漢字は、「㕣(山あいの窪地の意)」に「氵(さんずい)」がついた字であり、「(山あいの窪地から流れる)川から離れないように付き従う」というのが元々の意味です。「(川のように)長く続くものに付き従う」という意味を持ちます。
そこから「基準になるものから離れない位置にある状態を保つ」ものに対して「沿う」が使用されます。
▼「沿う」のイメージは「基準から離れずに進む」になります。
<POINT>
「沿う」は、何かに付き従っていくので、必ず基準(対象)があります。また、ずっと離れずに進むというニュアンスがあるため、長く続くものに対して使用されます。
たとえば、
「川に沿って散歩する」という場合なら、
川が基準(対象)になります。そして、川は長く続くものです。
・川に沿って歩く
・壁に沿って進む
・線路沿いを歩く
・台風が日本列島を沿うように進む
2.「添う」の意味
「添う」とは?
▼「添う」の意味は次のようになります。
①すでに何かがあるところに、また別のものが加わる。
②そばについて、離れないでいる。
あるものについて行く、あるものに加わる、あるものに付随する、傍を離れないようにするという意味を持ちます。
<POINT>
前述した「沿う」は「長く続くものに離れずにいる」という意味を持ちますが、「添う」にはそのニュアンスはなく「傍にいる/離れない」という点が強調されます。部分的・一時的なかかわりで使用されることが多いです。
・怪我人に寄り添う
・病人に添って病院へ行く
・学校に付き添う
・末永く連れ添う
・泣いている犬に、猫が寄り添ってあげる。
3.「沿う」と「添う」が両方使える場合
続いて「沿う」と「添う」の両方が使える場面です。
・企業方針にそう
・希望にそう
・相手の意向にそう
・ご期待にそえず申し訳ございません
ここで使われる「そう」は、「期待されるところから外れない状態を保つ」という意味を含み、両方の漢字が使えます。「叶う、適応する」などで言い換えるとわかりやすいと思います。
主に方針や期待、希望、目的など抽象的なものに対して使われます。
「沿う」と「添う」の両方の漢字が使われる理由として、方針や期待などは時間的に長く続くものであることから、「長く続くものに付き従う」という意味で「沿う」を使うことができます。また、方針や期待などに対して「傍にいる/離れない」という意味から「添う」の使用も可能になります。
どちらを使っても問題ありませんが、一般的には「沿う」のほうが多く使用されます。記者ハンドブックや新聞などでも、方針や期待などに対しては「沿う」を使うとされています。
そのため、特にこだわりがないようであれば「沿う」を使っておくのが賢明です。ビジネスシーンでも「沿う」の使用が多く見られます。
・相手の希望に沿う。
・会社の方針に沿う。
・国の政策に沿う。
・期待に沿う回答をする。
・既定方針に沿って事を進める。
・採点基準に沿って採点する。
・ご期待に沿えず申し訳ございません。
・ご希望には沿えないかもしれません。
※「添う」の使用も可
まとめ
1. <沿う>の意味
・基準になるものから離れない位置にある状態を保つ
沿う … 長く続いているものに付き従うイメージ
2. <添う>の意味
・すでに何かがあるところに、また別のものが加わる
・そばについて、離れないでいる
添う … 傍にいる/離れないイメージ
・泣いている犬に、猫が寄り添ってあげる。
3. <沿う>・<添う>の共通の意味
・期待されるところから外れない状態を保つ
方針や期待、希望、目的など抽象的なものに対して使用。この意味では「沿う」と「添う」のどちらの使用も可能。ただし「沿う」のほうが一般的。